「岩倉使節団 誇り高き男たちの物語」 著 泉三郎

「岩倉使節団 誇り高き男たちの物語」 

著 泉三郎

「岩倉使節団」という言葉は当然中学生くらいのときから知っていましたが、具体的にそれがどんな旅であったかまでは正直よく知りませんでした。

ただぼんやりと当時の政府の首脳が近代化された西欧を見て回り、西欧化つまり富国強兵と殖産興業を進めていかないと考えるに至ったこと、その後そうした使節組の首脳たちの変化が征韓論争において西郷たちとの軋轢を生んだということなどを理解していた程度でした。

ただこの作品を読んでみて、実際その旅がいかに壮大であったのかを知って驚きました。

飛行機など当然なく、ようやく鉄道が走り始めた時代において、船と鉄道だけで大人数で欧州に押しかけていたのですからね。

まさにジュール・ベルヌの「80日間世界一周」の世界です。

興味深かったのが、そもそも条約改正交渉までするつもりがなかったところ、森有礼や伊藤博文ら急進的な開明派の後押しで、条約改正交渉をアメリカにおいて始めてしまい、大失敗をしたという点です。

アメリカでの失敗は知っていましたが、それをキッカケに木戸孝允が伊藤を信用しなくなり、一方で伊藤が大久保利通に近づいたというのは、その後の展開を考えると面白いですね。

保守的だった大久保が開明派になり、逆に開明派だった木戸が保守的になっていくのも重要な点です。

木戸においては、教育や憲法に目を向けるようになり、それがその後の地方議会の創設や学制制度の開始、そして憲法設立などに繋がって行くのは非常に興味深かったですね。

彼らの視線を通じて、そのときの欧州の様子、国ごとによっても全然違っていた点などがわかって非常に面白かったです。

いかにして日本が欧州に追いつこうともがいていたのかがよくわかりました。