「新ジャングルの王者ターちゃん♡」
著 徳弘正也
単純に面白い
これほどまでにギャグとシリアスを両立させている作品も珍しいと思います。
確かに今の時代からしてみれば、下ネタのオンパレードなので下品だと言われれば、それは否めません。
ただ徳弘さんの下ネタは嫌な感じがせず、単純に笑えるんですよね。
子どもの頃もゲラゲラと笑っていたし、大人になって読み返してみてもやっぱり笑える。
下ネタを書かせたら、たぶんこの人の右に出る人はいないような気がします。
「ターちゃん」に関して言えば、ギャグの切れ味だけでなく、キャラ設定の見事さも際立っています。
特にターちゃんの妻であり、一応本作のヒロインともいえるヂェーンの描き方は秀逸です。
ヂェーンを太らせて若干サディスティックにしただけで(けれど根はやさしい)、モチーフである「ターザン」の世界観がここまでかわるのか驚きました。
ある意味で彼女のキャラ付がこの作品の良し悪しを決めたと言っても過言ではありませんね。
人気が出ると格闘漫画になっていくのは、少年ジャンプのセオリーでもあるので驚きはありません。
ギャグマンガでもジャンプでは格闘漫画になってしまうのです。
ただすごいのは、徳弘先生は本来のギャグセンスを失わずに、むしろそれをいいスパイスにして、格闘漫画としてのストーリーも至極のエンタメとして仕上げている点です。
ギャグに抜きでも全然読めるスリリングなストーリー展開になっているんですよね。
そして、面白いのが格闘漫画として結果を残しながらも、一旦純粋なギャグマンガに戻っているという点です。
これはほかのジャンプの作品にはない展開ですね。
たぶんこれは、徳弘さん自身が望んだことのように思います。
どんなに格闘漫画を上手く書けても、自分の本分はギャグなのだということを忘れなかったんでしょうね。
それと、たぶん戦い続けたターちゃんに幸せになってほしかったんだなって、今回改めて読み直してみて思いました。
作品を通じて感じたことですが、徳弘さん、すごい優しいんですよね。
下品なギャグと力強いストーリーの中に、徳弘さんの優しさみたいなものをすごく感じるんです。
一旦、ギャグマンガに戻った際に、ヂェーンを痩せさせて本来の美しい姿に戻した点なんかはその最たる例なのかなと思います。
何かターちゃんを喜ばしたかったっていうのが伝わって来るんですよね。
ただ作品の世界観の中心を担っていた太ヂェーンを失ってしまったことは、結果的には痛かった。
わき役としていい味を出していた梁師範がいなくなってしまったことも相まって、若干ギャグにパンチが欠けるようになってしまったかもしれませんね。
智光とかローズとか面白いキャラが他にも出ては来るんですけれどね、やっぱりヂェーンにはかなわない。
最終的に、ヂェーンもを元の体型に戻し、再び格闘漫画に修正されましたが、ちょっと勢いは削がれてしまった感じはしてしまいましたね。
ただその辺りを差し引いても、一気に読み進められる漫画であることは間違いないです。
大人になって再び読んでみて、こんなにもまた笑ってしまうとは思いませんでした。
ちなみにこの頃の徳弘先生のアシスタントをしていたのが、「ONE PIECE」の作者の尾田栄一郎さんです。
漫画かとしても人としても尾田さんは徳弘先生を一生の恩人として慕っています。
徳弘先生がいなければ、「ONE PIECE」もなかったかもしれませんね。