「掏摸」 著 中村文則
「掏摸」 著 中村文則 押し潰されるような、どうしょうもなく暗い、暗い世界。 スリと彼が巻き込まれる裏社会の深部の一端を描いたこの作品は、現実の暗部を文学に昇華させて描くことを特徴とする中村文則さんらしさがよく出ている作品だと思います。 重厚な文章でありながらも、どんどんと読者を物語に引き込むのは、中村さんの力量にほかなりませんね。 そして、芥川賞を獲った「土の中の子供」あたりのころは、世の中の不 […]
「掏摸」 著 中村文則 押し潰されるような、どうしょうもなく暗い、暗い世界。 スリと彼が巻き込まれる裏社会の深部の一端を描いたこの作品は、現実の暗部を文学に昇華させて描くことを特徴とする中村文則さんらしさがよく出ている作品だと思います。 重厚な文章でありながらも、どんどんと読者を物語に引き込むのは、中村さんの力量にほかなりませんね。 そして、芥川賞を獲った「土の中の子供」あたりのころは、世の中の不 […]
「ぽんちうた」 著 死後くん イラストレーターとして人気の死後くんの絵本です。 いわゆるわらべうたを死後くん独特のワードセンスで書き換え、これもまた死後くん独特の絵で唄の様子を描いています。 子供に媚びすぎることなく子どもが楽しめる作品で、大人もおもわずクスッと笑ってしまう場面も多いです。 勝手に節をつけて勝手に歌ってくださいという、子どもの創造力を掻き立てることを前提に絵本を一冊の絵本を作り上 […]
「宮崎駿論 神々と子どもたちの物語」 著 杉田俊介 アニメーション界の巨人、宮﨑駿さんを論じた本ですね。 哲学的、思想的知識が豊富であり、介護職をしているという実践的な経験を持つ著者のアプローチはなかなか独特で、読んでいて「なるほど」と思わせる論述がたくさんありました。 個人的には、宮﨑駿さんが被害者意識と加害者意識の狭間の苦しみの中で物語を作っているという話は面白かったですね。 被害者意識とい […]
「図説 科学史入門」 著 橋本毅彦 科学の発達を当時使われた絵画や図像などを用いて歴史的に見ていくという本です。 文系の人で、理系のことを教養として広く学びたい人にとってはこれほどありがたい本はないですね。 難しい話もそれにアプローチした様々な人のナラティブによって語られるので、歴史的に何がどうわかっていったのかがわかりやすくてついつい引き込まれてしまいます。 一部の宗教や民族主義などに偏ることも […]
ルポ川崎 著 磯部涼 大都市である東京と横浜の間にある川崎の実態についてルポタージュされた本です。 一口に川崎といっても北部と南部ではその様相はかなり異なっており、特に南部の川崎駅周辺から大師線に沿った工業地帯である川崎区には独特な雰囲気があります。 それはひと言でいえば他者にとっての「怖い」イメージなのですが、このルポを読んでいると、確かに未だにヤクザが蔓延り、また貧民窟でもある川崎区には、犯 […]
「漂泊のアーレント 戦場のヨナス ふたりの二十世紀 ふたつの旅路」 著 戸谷洋志 百木漠 親友同士であった政治思想家のハンナ・アーレントと哲学者のハンス・ヨナスの関係に焦点を当てた本ですね。 それぞれの研究者が共著で書いているので、内容がとても濃く、非常に興味が持てる本でした。本の構成として、それぞれの幼少期から青春期、ナチスによる迫害とドイツ脱出を経て晩年へとナラティブに書かれているので、こう […]
「ザリガニの鳴くところ」 著 ディーリア・オーエンズ 本屋大賞の翻訳部門で1位になった作品ですが、滅茶苦茶面白かったです。間違いなくここ数年で一番面白かった本ですね。自信を持って人にも薦められる本です。 帯で散々絶賛されているように、確かにこの作品はすごいです。 何がすごいかというと、ミステリーを基調としたエンターテイメント作品とも、差別をテーマにした社会派作品とも、とれるのですが、どちらとして […]
「地元を生きる 沖縄的共同性の社会学』 著 岸正彦、打越正行、上原健太郎、上間陽子 沖縄の地元の共同体を社会学的に研究したものをまとめた本なんですが、色々と考えさせられる本でした。 ある意味で、この本を一冊読めば、世界が支配的な関係で成り立っているということがよくわかる本です。 近年、日本本土に住む日本人にとっては、沖縄といえば日本有数の観光地であり、明るいイメージばかりの印象があります。 二十 […]
「推し、燃ゆ」 著 宇佐見りん タイトルや本の装丁を見て勝手に抱いていた印象と読んだ後の読後感がだいぶ違う作品だなと思いました。 論評などには、内容のぶっとんだ感じを評価している声が結構多くあったので、てっきりイメージ的には本谷有希子さんのような感じの文体の人かなと思っていたのですが、読んでみたら、今の若者の等身大の生きづらさが描かれているんだなと感じました。 一見、表題だけ見ると変わった性格の子 […]
「ブルドゥー『ディスタンクシオン』講義」 著 石井 洋二郎 フランスの社会学者のブルデューの著書として有名な「ディスタンクシオン」の解説本ですね。 ディスタンクシオンを理解する上で、肝となる概念がハビトゥスです。 ハビトゥスとは人々の日常経験において蓄積されていくが、個人にそれと自覚されない知覚・思考・行為を生み出す性向のことをいいます。 つまり、生まれ育った環境の中で、自らが意識することなく自 […]