効率的に企業内でCSRの効果をあげるためには、適切なマネジメントが必要です。CSRの活動範囲は非常に広範に及んでおり、またステークホルダーの要求や期待も多様化してきています。そうした中で、CSR活動を適切に行っていくためには、場当たり的なアプローチをするのではなく、計画的かつ戦略的に取り組み、かつその企業それぞれにマネジメントシステムを構築していく必要があります。
CSRのマネジメントを考える上で、まず最初にするべき大切なことは、“ステークホルダー・エンゲージメント”です。
聞きなれない言葉ですが、経団連の「企業行動憲章の実行の手引き」では、ステークホルダー・エンゲージメントを以下の通り通りに定義しています。
「企業が社会的責任を果たしてく過程において、相互に受け入れ可能な成果を達成するために、対話などを通じてステークホルダーと積極的に関わり合うプロセス」
ようするに企業は自分たちを取り巻く様々な利害関係者から真摯に話を聞くべきだと話ですね。プロセスとしては、まずは企業側が情報開示をし、それに対する反応をフィードバックする。そして、相互理解を深めたり、相違点にしたりと、対話を重ねていくことで、ステークホルダーとの信頼関係を築いていくという流れになります。
ステークホルダー・エンゲージメントが大事であるのは、ここでの対話によって導き出された意見が企業活動での目標設定や現場での実行に反映されていくからです。
一般のマネジメントシステムと同じようにCSRのマネジメントシステムも、方針を明らかにして目標を定め、その実行をモニタリングし、成果や課題を評価し、改善していくという、いわゆるPDCAサイクルとして構築されます。その一連のプロセスの中で、ステークホルダー・エンゲージメントで得られた意見が反映されていくことは、その効果を上げるためにも最も重要なポイントだと言えます。
またCSRのマネジメントを進めていく上で、二つ目に大切なのはCSRレポートの作成です。CSRレポートとは、その企業のCSRに対する基本的な考え方から具体的な取り組み、その成果などを報告したレポートとなります。企業はこのCSRレポートを公表することで、自分たちがCSR活動を行っているということを内外に示していると言っても過言ではないでしょう。
ここで大事なのは、レポートを作成していくためのプロセスです。担当者や担当部門だけが独立して作成するのではなく、関連部門を巻き込み、その中で事業計画にCSRを組み込んでいき、より一層CSRを社内に浸透させていくことが重要です。
CSRをマネジメントする上で、まず知っておきたい二つのキーワードについて簡単に説明いたしました。また詳しく説明しますが、CSRを適切に推進していくためには、この二つのプロセスをいかに実りある形で行えるかが重要となります。