ISO26000 CSRに関する規格や指針①

 今や世界中の企業でその存在感を示しつつあるCSR。しかし皆がそれぞれバラバラに勝手なことを行っていてもなかなか事態はいい方向には進展せず、効果も上がりません。グローバルな経済活動が行われている今は、労働問題にしても環境問題にしても、世界規模で皆が足を揃えて行わなければあまり意味をなさないからです。では、CSRを行っている企業は、皆、何に沿ってCSRを行っているのでしょうか? 今回から、世界をリードするCSRの主だった規格や指針を紹介したいと思います。その第一弾はISO26000です。

  ISO26000は、2010年に発行された組織の社会的責任に関する国際規格です。ISOとは、International Organization for Standerdization(国際標準化機構)の略で、日本ではイソと読まれたり、アイエスオーと読まれたりと統一した読み方はないようです。
 それでこのISO(国際標準化機構)とは何かというと、一言でいえば、国際間の取引をスムーズに行うための共通の基準を決める機関ということになります。そして、この機関が定めたのがISO規格です。
 ISO26000の特徴的な点は、従来行われている第三者規格ではなく、ガイダンス規格であることと対象を企業だけに限定せず、NPOやNGOなどを含めたすべての組織を対象にしていることになります。
 そしてISO26000では、組織が社会的責任を果たすための具体的な実践内容として、「7つの原則」と「7つの中核主題」が示されています。

「7つの原則」・・・・・・説明責任・透明性・倫理的な行動・ステークホルダーの利害の尊重
             法の支配の尊重・国際行動規範の尊重・人権の尊重
「7つの中核主題」・・・・組織統治・人権・労働慣行・環境・公正な事業慣行・消費者課題
              コミュニティーへの参画及びコミュニティーの発展

 7つの原則は、7つの中核主題を実践するに当たって踏まえるべき原則として示されたものです。7つの原則には、このほかにも40の検討項目があり、社会的責任の実践に関する組織の現状や課題をチェックすることが出来ます。
 また7つの中核主題には、各課題の中に36の具体的な課題があります。7つの中核主題は、あらゆる形態の組織に適用出来ますが、36の課題については、関連性の高い課題を選択した上での実践になります。

 この規格は英語の原文で約百ページありますが、社会的責任に対する理解に触れた上で、組織の中で社会的責任を実践していくための具体的な内容を説明しています。先進国から途上国まで含めた国際的な場で、複数のステークホルダーによって議論され、規格化されたものとしては、この規格は唯一のものでしょう。
 個人的には、「7つの原則」の一つである「ステークホルダーの利害の尊重」がポイントだと思っています。それは、説明責任や透明性、そして法律や人権を尊重することなどは、大事なことですが、ある意味それらは言われるまでもない当たり前のことで、多くの企業にとっては、全てのステークホルダーとどう向き合い、どう対応していけばいいのかが一番知りたいことだと思われるからです。
 企業は株主などのステークホルダーに対しても、企業の利益を踏まえた上での社会的責任を実践の必要性をちゃんと説明出来なければいけません。ISO26000は、これから社会的責任に取り組む組織や、すでに社会的責任に取り組んでいる組織が、ステークホルダーエンゲージメントを通じて、組織全体に社会的責任を効果的に統合するための手引(ガイダンス)として利用される規格となっています。

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