寄付税制とは、寄付をすることで社会に貢献したいと考えている人の活動を後押しするために、一定の法人に寄付をした人に税制上の優遇を与える制度です。税制上の優遇措置は、具体的には以下の三つからなっています。
(1)個人が寄付をした場合の税制上の優遇措置
(2)法人が寄付をした場合の税制上の優遇措置
(3)相続人が相続により取得した財産を寄付した場合の優遇措置
今回はまず(1)の個人が寄付をした場合の税制上の優遇措置について説明したいと思います。
個人が、認定NPO法人や特定公益増進法人(公益社団法人、公益財団法人等税制上の優遇を受ける法人の総称)に寄付をした場合には、確定申告をすることで、所得控除方式による寄付金控除または税額控除方式による寄付金特別控除のいずれかを受けることが出来ます。寄付金控除の対象となる金額は、「寄付をした金額 - 2,000円」です(総所得金額等の40%が上限)。ただし、税額控除方式による寄付金特別控除が受けられるのは、個人が寄付をした団体が、認定NPO法人か、一定の証明を受けた特定公益増進法人の場合に限られます。
確定申告をしていない人には、色々と馴染みのない言葉が出てきて、わかりにくいですね。まずは、所得控除方式と税額控除方式がどう違うのかというところから説明します。
所得控除方式は、実際の納税額ではなく、所得の部分から控除されるものなので、税率をかける前の所得計算の段階で差し引く控除になります。
一方で税額控除方式は最終的に出てきた納税額から差し引く控除です。そのため、控除される金額がそのまま安くなります。税額控除方式は最終的な税金額からそのまま控除されるので、ほとんどの人にとっては、所得から控除される所得控除方式よりも節税効果が大きいです。(ただし、高額所得者で税率の高い人にとっては、所得控除が有利とされています)
ようするに控除をする対象が所得そのものからするのか、納税額からするのかで、控除される金額が違ってくるという話ですね。雑多にいうと、高額所得者は所得控除方式の方が得になり、それ以外の人は、税額控除方式の方が得になります。
ちなみに税額控除方式の場合は、全額控除が出来るわけではなく、「寄付をした金額-2,000円」の40%、あるいは所得税額の25%に限られます。
また寄附金税額控除は、都道府県または市町村が条例で指定した法人に寄付をした場合に限っては、住民税でも受けられます。住民税では、10%の税額控除が受けられるので、税額控除方式を選択した場合には、最大で50%の控除が受けられる、つまりは、寄付をした金額の半分が取り戻せるということになりますね。
単純に寄付をすると言っても、その寄付をする団体が控除を受けられる寄付先であるのか、また寄付者にとって控除の方式はどちらか得であるのか、などと色々な選択肢があります。
まずは寄付をするという気持ちが一番大切なのですが、寄付者がこうした条件を吟味することによって、団体もより一層自分たちが選ばれるために研鑽を続けていくことになり、ひいては寄付社会の広がりにもつながると思うので、寄付者のみなさんには今一度、寄付税制の仕組みにも注目してもらえればな、と思います。