「空気の研究」 山本七平著

「空気の研究」
山本七平著

念のため、H2Oではなく、「空気を読む」の空気の研究ですね。
何年か前に東京都の小池知事が口にして、再び脚光を浴びた本でもあります。

作者の山本七平氏は、両親がキリスト教徒であり、生まれた頃からキリスト今日を肌に触れ、その文化を良く知る人であり、また第二次世界大戦時には激戦の地であるフィリピンで戦い抜き生き長らえた経験を持つ人でもあります。
そんな彼だからこそ行き着いたのが、この「空気の研究」です。
日本人なら誰でもまるで病のように犯されているこの空気という魔物なのですが、山本氏は彼独自の視点でこの正体がなんであるのかを語っています。

具体的には、多神教だからこその臨在的感覚(つまりは、言葉やモノに何かを感じてしまうアニミズム的な感覚ですね)が原因であり、これと一神教の世界の感覚(絶対的な神が存在しているからこそ、相対的な考えを持ちやすく、空気に流されにくい)とを比較しながら、見事に空気の正体を彼なりに解明しています。

恐ろしいのが、この作品、発表から40年も経ているのですが、全く古びることなく、今こそ必要とされている日本人論なんですよね。
空気の応用ともいうべき“忖度”という言葉が昨年やたらと流行っていましたが、この本では空気に対抗するべく水(水を差すの水です)のことにも触れているので、興味を持った人にはぜひとも読んでもらいたいです。