「ドント・ウォーリー」
2018年 アメリカ
「グッド・ウィル・ハンティング」のガス・ヴァン・サント監督の最新作です。
身体障碍者になりながら、風刺漫画家として人気を博したジョン・キャラハンの自伝的な映画ですが、物語そのものは、車いすの生活に自暴自棄となった彼がいかにピアサポートによって救われていったかが描かれています。
ピアサポートのことをよく知らない人にとっては、最初はちょっと戸惑うかもしれません。
実際、ピアサポートを運営する人物が胡散臭そうに見えたり、必ずしも会自体も円滑に進まなかったりするし、そもそもアルコール依存症の主人公に感情移入するのもなかなか大変です。
ただ主人公の気持ちが動いていき、彼が変わっていくにしたがって不思議と見ている方も映画そのものに引きつけられていきます。
見るというよりも、典型的な体験型の映画なのかもしれませんね。
だんだんと主人公が自分が憎んできた人々のことを思い返し、なぜ彼らを憎むのか、自分が何にこだわっていくのかを見つけていく。
これは、何も障がい者や何かの依存症を患っている人だけでなく、多かれ少なかれ、誰もが抱えている種類の問題であり、そこを自分で見つけていくことこそが生きる上で大切なのだということをこの映画は教えてくれます。
そうしたプロセスを経たうえで、主人公が自分が憎んできた人々に許しを乞い、そして自分自身を含めたすべてに対して赦しを与えていくシーンは秀逸です。
“赦す”というテーマは意外と陳腐に描かれやすいのですが、キチンとしたプロセスを踏んだうえで描かれているので、とても心にしみわたってきますね。
想像以上に心に残る映画でした。
ただ主人公のアンヌの描き方だけは、ちょっとわかりませんでしたね。
彼女が、主人公の妄想の産物という話であるのなら、腑に落ちるのですが。
そうでないなら、もうちょっと彼女の葛藤というか、気持ちが見えてくるとよかったかもしれません。