「私たちはどこまで資本主義に従うのか 市場経済には「第三の柱」が必要である」
著 ヘンリー・ミンツバーグ
私自身常々ぼんやりと考えていたことをしっかりと形にしてくれたという感じの本です。
この本の大きな主張は一つ。
つまり、政府セクターと民間セクターだけで社会を考えるのではなく、第三のセクターである多元セクターが前者二つと同じくらいの力を持ち、三つのセクターでバランスを保つことによって様々な社会課題が解決に向かうという話です。
多元セクターとは、わかりやすくいえば、NPOとかNGO、あとは協同組合といった非営利的な組織のことですね。
言うまでもなく、今全世界的に民間セクターが大きな力を持ち、各国の政府をも支配しているというのが現状です。
もしくは中国や北朝鮮など社会主義の流れの国が未だに政府が大きな力を持つか。
どのみち、非常にバランスが悪く、誰かが誰かを支配する構造には変わりありません。
そうした社会では当然貧富の差や人権問題、環境問題などの社会課題の解決は後回しにされてしまいます。
そこで、それを何とかするために希望の光となるのが多元セクターであるというわけです。
この話はとてもわかります。
しかも、実際に人々がイメージしているよりも、多元セクターに属する組織って意外と多くて、身近にある場合も結構あるんですよね。
問題は、これらのそれぞれの活動がバラバラでまとまった大きな力を持たないということです。
正直、個人的には、多元セクターが力を持つためにはどうしたらいいのか?という具体的な方策をもっと知りたかったのですが、そこがあまり書かれていなかったのはちょっと残念です。
ただこの人が言うマネジメントに関するコミュニティシップという考え方には大いに賛成です。
カリスマ的なリーダーシップでもなく、何でも平等なシチズンシップでもない、みんなを上手く動かす力、つまりはリーダーはコミィニティシップという考え方をもって組織を運営することがうまくいくという話なんですが、これは納得。
ていうか、偉い人みんながこうした考え方を持って社会を動かしてほしいとさえ思います。