「万引き家族」

「万引き家族」
2018年/日本

いやあ、とてもよかったです。そしてとても考えさせられる映画でした。
もともと是枝裕和監督の映画は大好きなのですが、期待に裏切らない素晴らしい映画です。
ドキュメンタリー出身の監督らしく、社会のリアルをうまくドラマに仕立て上げていると思います。
確かに万引きした家族があり、その家族は実は、、、という設定はありえないようにも見えますが、実際にその一人一人の家族の裏にあるバックグラウンドはリアルそのもので、現代日本の日の当たらない部分を見事に当てています。
エンターテイメントではない、映画の本来の社会性をキチンと描き切っている作品ですね。
カンヌのパルムドール、大納得です。個人的には「パラサイト」よりもこっちのほ方がよかったです。

個人的には、ラストの信代の取り調べ中のセリフに目を見張りました。

「遺体を捨てたんですか?」
と取調官に問われ、
「拾ったんです。……じゃあ、捨てた方はどうなるんですか?」
と問い返す信代。

このセリフには、参りました。確かに社会の矛盾をしっかりと言っちゃってますね。
確かに信代も治も初枝も駄目な大人と言えるでしょう。彼らが罪に問われるのもしょうがない部分はあります。
でも、そもそも初枝を捨てた元夫やゆりを虐待していた親たちは果たしてどうなんでしょうか?
ていうか、そもそも弱気を追い詰めるからこそ、社会に矛盾が生まれるのであり、追い詰められて暴発した人たち、罪が露見した人たちだけを社会的悪とするのはどうなんでしょうか?
そうした問題をこの映画は見事にドラマの中で表現しているといえるでしょう。

そして単に貧民VS富豪という二項対立に落とし込むのではなく、結局どうすればいいのかと観ている人に問いかけるテーマ性は見事です。

「結局、わたしたちじゃダメだったんだよ」

治に対する信代のこのセリフがすべてです。
観終わった人はゆりのことが心配でならなくなると思いますが、ここに安易なハッピーエンドを与えないことこそがこの映画の言わんとしていることなんですよね。
社会はまだまだ残酷だと、その中でわたしたちに出来ることは何か?と必死に訴えているんです。

これは間違いなく何年も残る名画ですね。
そして、信代を演じた安藤サクラさん。うますぎます。朝ドラで見たときとはまったく違うので驚きました。ちょっと樹木希林さんの後継者を見た気がします。