なぜ大型補強をした楽天は4位に沈んだのか。石井GMと三木監督が出来なかったこと

楽天イーグルスが2020年の全日程が終えました。
55勝57敗8分けの4位。
シーズン前に評論家のほどんどが本命ソフトバンクホークスの対抗馬として挙げていたのに、この成績は寂しい限りです。
当然、三木監督や石井GMへの風当たりは強くなっています。
特に石井GMに関しては、前年にチームを最下位から3位に引き上げた生え抜きの平石監督を3位はBクラスと一緒だと辞めさせにもかかわらず、結果3位よりも下位になってしまった、しかも散々選手を引き抜いた西武ライオンズよりも順位が下になってしまったのだから、そもそも石井GMのやり方に疑念を抱いていた人たちの批判は止みません。

結果がすべてを言われるプロ野球。
その結果が出せなかったことで、石井GMや三木監督が批判されるのはしょうがないとは思いますが、ただ石井GMがやったことは本当にすべてがチームにとって悪かったのでしょうか。そして、仮にそれがそうじゃなかったとしたら、一体彼がやったことの何がチームにとってプラスであり、逆に何が足りなくて4位という結果になってしまったのでしょうか。

色々と言われる石井GMですが、実は石井GMが行った補強策は結果が出ています。
二年連続で当たり前のように結果を出している浅村選手は言うまでもありませんが、今期ロッテからFA加入した鈴木大地選手もオリックスから移籍したロメロ選手も、メジャーから戻ってきた牧田選手も、移籍組は軒並み結果をちゃんと残しましたし、一様に疑問に思われた去年のドラフト1位の小深田選手も新人王を争うほど活躍しました。
実際に、開幕ダッシュに成功した楽天は新戦力たちの活躍もありずっと上位に居ました。

ただシーズン半ばが過ぎ、好調だった打線の勢いがなくなってからチームの状態が悪くなってきました。
そしてブルペンの調子も落ち、逆転負けが増えていきます。
こうなると負の連鎖が始り、結局追い上げてきた西武にも抜かれて、4位で日程を終えました。

一体何が悪かったのでしょう。
一つは三木監督の経験不足だと思います。
確かにデータを使うのはうまいのかもしれず、うまく行っている時にはそれがハマっていましたが、問題はそれがうまくいかなくなったときにどうすればいいのかがわからなったこと。
長いシーズン、当然いいときもあれば、悪い時もあります。
監督の手腕は、そのチーム状態に悪い時にどうするかで問われるんですよね。
名将と言われる監督は、だいたい長いシーズンを通して、どうすれば悪いチーム状態を改善出来るか、そしてシーズンの終盤にチーム状態を最高に出来るのかを考えます。
今年のいい例が西武の辻監督ですね。
打線だけのチームで二連覇しただけでも名将と言っていいかもしれませんが、今シーズンはその打線も最悪な状態の中で、うまくやりくりをして最下位争いからCS争いが出来るまでチーム状態を終盤に上げてきました。
過去二年は打線で打ち勝つ野球をしていたチームが、秋山が抜け、主力が軒並み不調の中で、今のチームで出来る最善のことを見極めて、今シーズンの唯一のストロングポイントであった勝ちパターンの継投に勝機を見出したんですね。
終盤に一気に優勝に駆け上がった去年の采配ぶりも見事でした。

一方で、三木監督は打線が打てなくなったら、打つ手がなくなってしまったという感じでした。最初のやり方がうまくいかなくなると、状況によって戦い方を変えることが出来ず、選手も何も指示されないままただ同じことを繰り返していたんだと思います。
もちろんこれは監督だけの問題ではありません。
チームが数年で外様の主力ばかりなったことで、生え抜きとの間でのバランスが悪くなり、組織として機能不全に陥っていたのかもしれません。それを繋ぐ役割として打ってつけの嶋選手は後味悪く移籍してしまいましたし、監督が人をまとめることに長けた平石さんだったらとも思いますが後の祭りです。

まあ、ようするに能力値の高い人をかき集めればいいというわけではないんですよね。
課金ゲームではなく、あくまで人やがるチームスポーツなので、それぞれの気持ちが離れていてしまえば、上手く行くものもいかなくなるんです。
本当に強いチームは、チームとしてどうまとまるのかを知っているんですね。人をどう使うかも。
今のソフトバンクがそうですし、80年代から90年代にかけての西武もそうでした。
ただ選手たちがそれを自立して出来るようになるまではかなり時間がかかります。
そうした選手の足りない部分を、いかに監督がモチベーターとして役割を果たすのかが、今の楽天のような新興チームには必要なのですが、残念ながら今年の三木監督がそれが出来なかったんだと思います。

そしてこれからのことを考えた場合、問題は、三木監督がデータ以外のところで、選手たちの感情面をうまく盛り上げようとしていたかどうかですね。
やろうとしたけれど出来なかった。だから来期はそういった部分をどうにかしたい。
と、いやいや、あくまで自分たちはデータ中心に考えている。楽天という会社はそれを確立したいから、三木監督を選んだ。だから三木監督は来期もデータをどう生かすのかをさらに考えてほしい。
と考えるのでは全然違ってきます。

全日程終了後、石井GMは「彼のいい所を消さないように自分も手助けすればよかった」と語っています。
このコメントだけを聞くと、あくまで三木監督の足りない部分を埋めるというよりは、三木監督のデータを使うやり方をもっと助けてあげれば、もっと出来たのではないかと言っているように聞こえ、あくまで自分たちのやり方は変えないという姿勢が垣間見られます。

まあ、相変わらずの言葉足らずで、もう少しファンに対して説明責任があるべきだとは思いますが、果たしてこの自分たちのやり方は決して変えないと強気の姿勢が吉と出るか凶と出るか。

来年も今年と同じようなカタチで結果が出てこなければ、今度は当然石井GMの責任も問われることになるでしょう。

ちなみに西武の増田やヤクルトの石山とFA市場にウィークポイントである抑え候補が出てくるかもしれないのに、楽天は早々と今年はFA補強はしないと言っています。

松井裕樹の抑え復帰が既定路線なのか、増田も石山も残留もしくは他球団への移籍が濃厚という情報を得ているからなのか、はたまた金満という悪しきイメージを楽天本社が嫌ったのか…。

理由はわかりませんが、とにかく若手の育成に力を入れていくとは言っています。たぶんシャギワに代わる高額な中継ぎ投手はメジャーから獲得するとは思いますが、育成を基本路線にしていきたいという言葉は信じたいです。そっちの方がチームにとっては長い目で見れば好影響であることは間違いないのですから。

個人的には今シーズンて引退した渡辺直人氏が楽天内に残るかどうかに注目しています。人格者と言われていますし、西武にも所属していたので外様組と生え抜き組を繋げる役目には打ってつけです。わたしがGMなら間違いなく渡辺氏を一軍コーチに抜擢してベンチに入れたいと思いましね。

嶋選手や高梨選手の扱いを考えると不安にはなりますが、果たして石井GMがこの生え抜きをどう扱うか。
そこも含めて石井GMがどう立て直してくるか、見ものではありますね。

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