科学立国から転落!? 科学分野の競争力沈下は、若手研究者の不遇が理由

悲惨なポスドク、東大博士号でも非正規

NHKスペシャルを見てびっくりしました。
コロナ禍において、コロナ関連の論文発表が少ないという話だったのですが、原因を追究していくと、ようするに若手研究者の多くが非正規雇用になっていて長期的な研究を続けられていないという問題に行き着くそうです。
そして、そもそもどうしてそんなことになったかというと、大学改革として研究者の競争力を高めるために国立大学の独立行政法人化がなされましたが、その煽りによって結局は若手研究者の給与や雇用が減ってしまったとのことです。

政府も色々と政策を打ち出しますが、でも短期的に結果が出る研究ばかりに予算が割かれているという話らしくて……。
ていうか、割を食ってポスドクとして高齢化してきているのって、ようするに就職氷河期世代ですよね。
こんなところにも、政策の失敗によって追い詰められている就職氷河期世代がたくさんいるというわけです。
しかも本来ならば、頭が良く、日本を支える人材になっている人たちが、上の世代による「調整」によって十分な報酬もないままにいいように働かされているってことなんですよね。

まあ、そもそも受け口がないのに、政府がポスドクを増やすような政策をしたのも悪いんですけれども、企業も企業でそういう人たちを雇い入れて教育をするっていう発想があまりないことにも問題があります。

国全体に後進を指導するという感覚がほとんどなく、古びた縦社会の感覚で若い奴は言う通りにしてればいいったのだという感じなんでしょうね。ポジションは奪い取れとか偉そうにいうけど、そもそもどっぷりとあぐらをかいている人たちが居座っていてハードルがかなり上げられているんですよ。

それにしても、何か氷河期世代はどこを見てもとことん悲惨な目にしか合わされていないような気がしますね。

一応、これからの希望の光として、番組では沖縄科学技術大学院大学のことを紹介していました。通常の大学とは違って沖縄振興予算が使えるので資金が潤沢にあり、長期的な研究に対しても投資がされているようです。また分野を超えた横の繋がりがあり、そこから様々な発想が生まれているとか。今では海外からの優秀な研究者たちがその環境に憧れて集まり、世界では東大よりも高い評価を受けるまでになっているそうです。

理系の研究者からすると、知る人ぞ知る場所なんでしょうね。ただ色々と調べてみると、ここもNHKが言うほどパラダイスな面だけではないようです。

沖縄科学技術大学院大学 パワハラ被害58%  報復恐れ、通報は19%

パワハラやセクハラなどが問題になっているようですね。まあ、どこの大学でもありそうな話ですが、そういう意味では先端を行く沖縄科学技術大学院大学も例外ではないようです。

つまるところ、若手の雇用が狭き門であることに加えて、若手の研究に与えられる資金も少ない。それが故にそれを決める権限がある人たちの立場が強まり、不条理な力関係が最初から決まり切ってしまっていることに問題があるんですよね。

大学に限った話ではありませんが、既得権を持つ世代を保護するあまりに、若手の育成がかなり犠牲にされてしまっているんです。完全に若者はもっと怒っていい話であると思いますがね……世代間闘争を煽ってもしょうがない部分はあるんですけれど。

ただ現状こうした結果が明らかになってきていることは上の世代の人たちも認めるべきであり、それに対して自分たちはもう逃げ切れるから知らないではなく、必要なことは出来る限り尽くして、若い人がどんどんと力を発揮出来る世の中にしていくべきだと思います。

そうじゃないと、国そのものの体力が先細っていくだけで、それは年金制度の行き詰まりや健康保険の自己負担額の増加なので、逃げ切れると思っている世代にも、必ずやその負担が跳ね返ってきますからね。

それにしても、バブル崩壊からこの数十年間、いかに国も企業も若者に責任を転嫁させることでその場しのぎをしてきたのかっていうことが絶望的なくらいに明らかになってきてますね……。