米投資アプリ「ロビンフッド」は救世主か?悪の手先か?

アメリカの投資アプリ、ロビンフットが若者を中心に人気を集めています。
売買手数料無料や単位未満株を1ドルからでも投資できる手軽さが若年層個人投資家にうけ、ユーザー数は今や1300万人超まで膨れ上がっているそうです。

ロビン・フッドといえば、言わずと知れたイギリスのシャーウッドの森に住む義賊の首領ですね。
この投資アプリが中世の英雄の名を冠していることには意味があります。
それはこの新興企業のスローガンを見ればわかります。
「すべての人々に金融を民主化する」
株式投資をフィンテックの力でヘッジファンドや証券会社などから個人の手に戻すという社是がこのアプリの旗印であり、これが深刻な経済格差に苦しむアメリカの若者たちの心を掴んだのです。
それはそうですよね。コロナ禍にあって富裕層だけが資産を増やしているわけで、その大きな原因が金融そのものが富裕層のためにデザインされていると言っても過言ではない状態ですからね。

まさに若者たちにとっては、投資アプリ「ロビンフッド」は名前のそのままに裕福な者からお金を巻きあげ、貧しいものに分け与える伝説の義賊「ロビン・フッド」に見えたのかもしれません。
実際に最近の米国市場では、「ロビンフッドラリー」と呼ばれる、ロビンフッドユーザーが特定銘柄に殺到して株価を急騰させる現象を何度も引き起こしており、株式市場に影響を与えているんですよね。

ただそんな飛ぶ鳥を落とすような状況なあったロビンフッドですが、2020年12月17日に事態が急変します。ロビンフッドの収入源のほぼ半分がペイメント・フォー・オーダーフローであるにも関わらず、そのことを隠していたとして制裁金6500万ドルの支払いを命じられたのです。
ペイメント・フォー・オーダーフローとは、コンピューターによる超高速自動トレードを行うヘッジファンドにユーザーの発注情報を回してリベートを受け取ることで利益を得ることです。
つまりロビンフッドは、義賊と称して仲間を集めていたくせに、敵だと喧伝していたヘッジファンドに、あろうことか集めたユーザーの情報を売り飛ばすことで利益を得ていたということですね。
そうなってくると、だいぶ話が変わってきます。
金融の民主化を謳いながらも、金融格差を引き起こしている張本人に飼われていたという話になってきますからね。

そしてそうしたロビンフッドの立場が問われる事件が起こります。
発端は米ゲームストップの株価乱高下ですね。
これは米オンライン掲示板「レディット」でやり取りした個人がスマホ証券ロビンフッド・マーケッツなどを舞台に「共闘」買いし、ヘッジファンドによる空売りの買い戻しを巻き込んで株価が乱高下したという話なんですが、ここでロビンフッドは、あろうことかゲームストップ株の取引に制限をかけたんですね。
これでは、ロビンフッドは自社の顧客である個人投資家よりもヘッジファンドの肩を持っていると言われても仕方ありません。

ロビンフッドのCEOは公聴会で、「(ゲームストップ株など)特定の株の取引を一時的に制限したのは、規制当局が定める預託金の条件に従うためでしかない。前例のない取引量に対応するために必要な措置だった。多くの仲介会社が類似の理由で制限措置を講じている。顧客がロビンフッドを使って取引を再開できるよう、34億ドルの追加資本を調達する措置を講じた。ロビンフッドがヘッジファンド救済のために行動し、顧客の利益を損なうように動いたという主張は全く間違っている。何百万人もの小口投資家や、我々の顧客が最優先だ」と述べていますが、何だかもう言葉と行動が伴っていないのでこの人たちが一体誰の味方なのだかわかりませんね。
おそらくは誰の味方というよりも、いかに自分たちがうまく立ち回り、利益を上げるのかということだけを考えているように思えます。
ようするにこれまで明らかになっている事実を客観的に見ると、ロビンフッドは世の中を変えるために活動する義賊というよりも、義賊ビジネスをやっていると捉えた方が正確なのかなと思います。
確かに金融を民主化するという概念を広げたことは意義深いとは思いますが、結果的に投資活動そのものが倫理観を欠いた出し抜き合いに過ぎないということが明らかになってしまっていることは残念です。
金融を民主化するために、結局ヘッジファンドと同じことをやっていても、イタチゴッコになるだけですしね。

金融や投資とはそもそも実体経済に対してそれらが成長するために補助をするのがその役目だったはずです。
それがいつしか金融や投資そのものが経済の中心になってしまっていることで巨大な格差が生まれ、世界がおかしくなっています。
金融の民主化を目指すなら、まずこの逆転現象をいかに元に戻すのか、そうした法整備が先に必要なのではないでしょうか?
差し当たっては、超高速自動トレードへの規制がまず必要なのではないかと思います。
これは明らかに金儲けのための投資ゲームでしかなく、資本主義の倫理からすらも外れていると言わざるを得ない代物ですからね。
わかりやすいAIの悪用だとも言えるでしょう。
トマ・ピケティが言うようにこれらのトレードに税金をかけるなりなんなりの措置を国際ルールとして作るべきなのではないかと思います。

まあ、アメリカのようにすでに政治そのものが富裕層に乗っ取られ、富裕層が利するような法案しか通らない世界では難しいのかもしれませんが、こうしたところをキチンと対処し、再分配を地道に機能させることでしか社会分断が収まりません。
ただやり方はどうであれ、ロビンフッドの若き投資家たちが金融の民主化を掲げて行動に出ていること自体には好感は持てます。国境を超えた若い力でよく話し合いながら、この歪んだ世界を少しでもマシな方向に持っていってほしいですね。

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