「機動戦士ガンダムNT」

「機動戦士ガンダムNT」
2018年/日本

「逆襲のシャア」から「UC」に続く流れに沿った話ですね。
「UC」の物語を作った作家の福井晴敏さんが「UC」の外伝的に書いた小説を映像化したものです。
NTとはナラティブの略語であり、物語とニュータイプのダブルミーニングだそうです。
つまり、「逆襲のシャア」で登場したサイコフレームにまつわる話の続きであり、サイコフレームはパイロットの力をモビルスーツに直接伝える役目を果たすものなので、ようするにそれによって露わにされるニュータイプの物語、そもそもニュータイプとは何ぞやという話なんですね。
そういう意味では、「逆襲のシャア」から続くこの点におけるモヤモヤを晴らしてくれた作品だと思います。

さて、ストーリーの方ですが、舞台は「UC」におけるラプラス事変後です。
物語の中心はヨナ、ミシェル、リタの幼馴染三人組。
でもこの三人組は単なる仲良し三人組ではなく、一人だけがニュータイプとしてコロニー落としを予見したという話であり、残りの二人は偽物だという設定です。
この設定は、非常にうまいです。
さすが福井さんです。
三人がそれぞれに感情を抱きながらも、一つの嘘がその後の三人の運命を決定づけていて、その結果離れ離れになってしまった三人の気持ちがどうなっているのか、ということが物語の大きなストーリーラインになっています。

どうしても外伝的な要素が強く、また2時間程度でまとめなければいけない話なので、何がどういう状態で、誰が何をしているのか、を掴むまで時間がかかってしまって、物語への入り込みにくさはあったのですが、この三人の話がより明らかになってくるにつれて、物語にうまく感情移入することが出来ました。
また敢えて主人公をニュータイプとせずに、ニュータイプを追いかけさせたことによって、ニュータイプとは何なのかという本作の肝ともいうべきテーマについて、考えさせることに成功させていますね。

ただちょっと残念に思ったのは、結果的に敵役となるゾルタンのキャラ設定が若干雑に見えてしまったこと。
まあ、ガンダムの世界ではあるあるなんですが、強化人間の末期として、錯乱状態にあるキャラはよく出てくるわけで、そういった人たちが物事を掻きまわすのですが、大抵そこにあまり理屈がなく、何となく主人公の行動を際立たせるための都合のいいキャラ扱いになってしまうんですよね。
シャアの出来損ないであり、フルフロンタルになれなかった男、という設定は面白いのですが、その面白さを生かし切れていない。
いつも思うのですが、強化人間だからと言って、毎回狂気に走らせなくてもいいと思うんですよね。
さすがにちょっとパターン化してしまっているので、もっと冷静なキャラでもいいし、せっかくニュータイプのことをテーマにしているのなら、主人公たちとはまた違った正論を、観客から見ても、そうかもしれない、と思わせるようなことが喋れるキャラクターにしてほしかったです。
そうすれば、テーマがテーマだっただけに、もう一歩も二歩も物語が深まったとは思うのですが。

まあ、でも、ネタバレになってしまいますが、最後の最後でバナージがちょっと出てきたのはよかったです。
この物語単体で観れば、蛇足かもしれませんが、「UC」を観たあとでバナージが結局どうなったのか、ミネバ様と離れ離れになってしまったのか、気がかりでしょうがなかったので、彼が現在どうしてるのか、またバナージやミネバ様がどこに向かおうとしているのかが垣間見れたことには満足致しました。

それにしても、やっぱり改めて思うのは、強化人間の話はちょっと切ないですね。