「ローマの休日」

「ローマの休日」
1953/アメリカ

今も語られる機会の多い古典であり、オードリー・ヘプバーンの名を世界に知らせしめた作品ですね。
物語は不自由な公務に嫌気が差したヘプバーン演じるアン王女がグレゴリーペック演じるアメリカ人記者ジョーと出会い恋に落ちるという話です。

話の味噌となるのは、このジョーという人物がそもそも記者として特ダネ欲しさにアン王女に付き纏ったという点。
つまり、ジョーにはそもそも王女に対して何の感情もなく、王女はジョーにとって取材対象でしかないわけですね。
だから盗撮することも厭わず、刺激的な見出しを絶えず考えてさえもいる。
でも、王女とともに過ごしていくうちに、王女を一人の人間だと認めるとともに、彼は彼女に対する自分の感情や気持ちの変化に気がついていくわけであって、この彼の心の変化こそがこの映画の肝であるわけですね。

華やかな恋愛映画のように見せかけつつも、実は当事者性を持つに至ったジャーナリストの話なんです。
そう考えると、この映画のテーマはそのまま現代にも当てはまり、改めてこの作品が普遍性を持った話だということがわかります。
オードリー・ヘプバーンの可愛さだけで後世に残っている作品ではないのです。

ただやはりこの映画におけるオードリー・ヘプバーンの存在感は圧巻ですね。
特にラストの記者会見のシーンは映画史に残るシーンだと言っても過言ではないでしょう。
お互いに立場上言いたいことが言えない上で、当たり障りのない言葉を王女とその他大勢の記者という関係の中で交わす。
でもその表情にはお互いの気持ちがこれでもかというほど言い表せれている。
これぞ映画という演出だと思います。
昨今の技術力を結集した演出もいいのですが、これからの映画監督にはこうした演出をよく勉強していってほしいですね。