「日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙
伴名練 編
SF作家の伴名練さんが編集したアンソロジーですね。
姉妹編の「怪奇篇」が面白かったので、「恋愛篇」も読んでみました。
収録されているのは、以下の9篇です。
「死んだ恋人からの手紙」中井紀夫
「奇跡の石」藤田雅夫
「生まれてくる者、死にゆく者」和田毅
「劇画・セカイ系」大樹連司
「G線上のアリア」高野史緒
「アトラクタの奏でる音楽」扇智史
「人生、信号待ち」小田雅久仁
「ムーンシャイン」円城塔
「月を買った御婦人」新城カズマ
個人的に面白かったのは、まず「奇跡の石」と「人生、信号待ち」ですかね。
「奇跡の石」は単純に物語として面白く、どんどんと読み進めることが出来ました。
短編の場合、通常、アイデアや出だしがよくても、なかなかうまくまとまっていないということも多いのですが、この作品は短編にもかかわらず、まとめ方も自然で、何だか長編を読んだような重厚さというか、満足感がありましたね。
「人生、信号待ち」は、状況づくりと文章が面白かったです。
特に前半は、思わず何度も噴き出しながら読んでしまいました。
あと、気になったのは「G線上のアリア」
高野史緒さんは、「カラマーゾフの妹」の人ですね。
歴史改変モノというジャンルをひたすら開拓しているみたいで、「カラマーゾフの妹」もその延長線上に出来た作品だったんですね。
これを読んで、歴史改変モノというジャンルに非常に興味を持ちました。
アイデアが面白かったのは「劇画・セカイ系」。
セカイ系と現実世界のズレを描いていて面白かったです。
結末はそれでいいのかというモヤモヤ感が残りましたけれど、それも含めてテーマなんでしょうね。
ほかにも気なる作品が多かったです。
SF短編は、世の中的に広く読まれているというよりは、コアな層に受けているという感じですが、こういうアンソロジーがたくさん出ることによって、もっと色々と発展してほしいジャンルですね。