「劇画 ヒットラー」
著 水木しげる
「ゲゲゲの鬼太郎」で有名なレジェンド、水木しげる先生の隠れた名作ですね。
ヒットラーを題材にした海外の作品は多いのですが、こうやってヒットラーの生涯を描いた作品って実はすごく少ないんですよね。
確かに、子どもたちが読むような伝記の題材には、偉人扱いが出来るわけがないので難しいですしね。
ただ個人的には、なぜヒットラーがあのような独裁者になっていったのか、若いときからの道筋を通して知ることが出来たのは、非常に興味深かったです。
もちろん、若いときは画家志望だったとか、ミュンヘン一揆とか、知ってはいましたが、どういう状況の中で、それがなされていったのか、ヒットラーがどう変わって行ったのか、その変遷を知ることが出来るのはある意味でかなり勉強になります。
まあ、これは個人的な意見なのですが、歴史上の人物を偉人と目される人物だけをとりあげるのではなく、ある意味でヒットラーとかスターリンとかね、反面教師的な意味で彼らの目線で語った話はもっとあっていいかもしれないと思いました。
子どもにとっても、結構勉強になると思いますしね。
臭いものに蓋をするのではなく、なぜこのような人物が生まれてしまったのかを考える意味で、必要じゃないかなと思います。
まあ、冷静に考えればね、豊臣秀吉なんかも決して偉人ではなく、立身出世のイメージが先行しているだけで、実際はとんでもなくひどい独裁者ですしね。
さて、前置きはさておいて、この作品、ヒットラーを題材にしているだけあって、主人公のヒットラーに感情移入をするということは一切ありません。
でも、感情移入が出来ないのに、なぜこのような人物が、あのようにスルスルと大それた独裁者になってしまったのか、ということを興味を持って読むと、非常になるほどと思わせられます。
個人的に面白かったのが、水木先生の絵でヒットラーの人生を追って読んでいくと、次第にヒットラーが妖怪のように思えてくるんですよね。
ぬらりひょんか何かに。
まあ、人間の業が強調されたのが悪い妖怪だとすれば、ヒットラーは妖怪だったといっても言い過ぎではないかもしれませんね。
単純に漫画として読むだけでなく、歴史を勉強するという意味でもかなりお勧めできる本です。