「部長島耕作」
著 弘兼憲史
課長だった島耕作が部長に昇格したあとの話です。
シリーズの第二弾ですね。
個人的には、「課長」よりも「部長」シリーズの方が面白かったです。
たぶん、それは「課長」の時の時代背景がバブルの時代で、今のわたしたちの感覚からするとどうしても違和感を覚えてしまうんですよね。
漫画が面白くない訳じゃないんです。
漫画は面白かったんですが、どうしても読んでいてジェネレーションギャップがぬぐえなかったんです。
その点「部長」シリーズでは、すでにバブルが崩壊し、日本が斜陽の時代になっていて、時代背景そのものが非常に景気の悪い話になっています。
正直、「ああ、これならわかる」と物語に入っていけました。
全体的なストーリーの流れとして、島耕作を出向させることで、様々な業界の話を描いたのは、良い手だなと思いました。
飽きずにエピソードごとに楽しめましたからね。
個人的にワイン編は、そもそもワインに対してそれほど興味がなかったのでイマイチだったのですが、サンライト編でのリストラの話とかは非常に面白かったです。
ポイントしては、「課長」シリーズに比べて、作者が明らかに日本の会社のシステムのおかしさに対して、呆れ半分に暴露している点です。
「課長」シリーズでは、会社そのものもうまくいっているときの話なので、どうしてもそこに食い込みにくく、派閥争いなどの醜悪さはあっても、そんなもんだろうというくらいの温度でした。
でも、「部長」シリーズともなると、このあたりの日本の縦社会のバカバカしさをバカバカしいものとして露骨に描いており、そこはとても好感を持てましたね。
結局、日本がダメになったのは、そのへんなんだっていうのがとてもよくわかります。
「おかしい」と思いながらも、ただひたすら会社に従順である島耕作には、どうしても感情移入がしにくい面もあるのですが、そこをひっくるめて、そうした島耕作を「ちょっとカッコ悪く」描いてもいたので、そのあたりは読んでいて作者の意図がヒシヒシと伝わってくる感じで納得しました。
まあ、引き続き女性関連の話では、相変らずこれ見よがしにちょっと淫乱気味な女性を出すことで、男性の女性関係の話を結果的に擁護しているという悪癖は「課長」シリーズからそのままですが、このあたりは、今の時代からしてもちょっとどうかと思いますし、十年後二十年後はかなり時代錯誤な描写として受け止められるのかなと思います。
実際、福岡の女性の描写とか、福岡県民から抗議が出るんじゃないかってくらい酷いですしね……。
さて、なんだかんだで読み進めてしまう漫画なのですが、取締役以後も気になります。
この漫画を読めば、バブル以後の日本経済がどう転んでいったのか、何がいけなかったのかがとても良く分かると思うので、やはり若い人にも読んでほしいですね。
世代によってかなり感じ方が違うかもしれませんが、それを語り合うことで、今後のヒントにもなりそう気がします。