「そして誰もいなくなった」
著 アガサ・クリスティ
アガサ・クリスティの名作ですね。
ミステリーの最高傑作の呼び名も高い作品です。
映画で観たことはあったのですが、改めて本で読んでみると確かにすこぶる面白かったです。
まずすごいなと思ったのは、無駄が全くないという点。
本当にスルスルと読めることが出来ました。
見ず知らずの人間が10人、離れ小島に呼び寄せられることで話が展開するのですが、圧巻なのは探偵など誰かを主人公にして謎解きをするようなやり方をとらずに、十人それぞれにバランスよく、また的確に心情を語らせることによって、話を構成している点です。
さらっとやってのけていますけれど、これって相当の技術力がないと出来ないんですよね。
しかも大抵10人なんて人数を扱ってそんなことをやったら、話がこんがらがって読みにくくなるのがオチです。
プロットの構成力が抜群で、しかもそれぞれのキャラ付の的確なんですよね。
しかもダラダラとそれぞれのキャラクターに語らせるのではなく、そのキャラをしっかりと印象付けるセリフだけをしっかりと言わせている。
一人、また一人と殺人によって登場人物がいなくなっていくうちに、自分もそのうちの一人のような錯覚になって、スリリングになっていくんですよね。
結末まで読んで、オチにも納得しました。
結末を知った上で、もう一度読んでみたいと思ったくらいです。
確かに現代社会からすると、なかなか成立のしづらいシチュエーションですが、それを差し引いても、今読んでも十分に楽しめる作品ですね。
ただただアガサ・クリスティの恐るべき筆力に唸らされました。
ミステリーをこれから書きたい人にとっては、これほどの教科書はないですね。
でも、尺がそこまで長くないので一見簡単そうに見えますが、これと同等のレベルのものを書くのは相当な修練が必要だと思います。