「日本の公安警察」
著 青木 理
少し前に出版された本ですが、日本の公安警察を理解するためにはこれほど適切な本はないですね。
たぶん、多くの人は刑事警察と公安警察の区別がついていない人が多いと思います。
もちろん、よく刑事ドラマなどで公安警察が登場することがありますし、少ないながらも公安警察が主体の小説などもあるので、みんな「公安警察」という名前は知っているけれど、彼らが何をやっているかと聞かれれば上手に説明できない。
何となく後ろ暗いというか、あの手この手を使って情報を集めている組織ということくらいは分かるんですけれどね。
そもそも公安警察のOBOGがあれこれと喋ることも少ないから、世に出て来ている情報が少ないんですよね。
そうした背景の中で、この本は当時にあって出来うるだけの情報を集めて公安警察とは何かということを説明しています。
組織図を説明されただけでなるほどと思いました。
公安が成り立っていった歴史とかもね。
戦後、警察は中央集権的なやり方から、地域ごとの自治的なやり方での運営を求められていたのに、公安警察の必要性から中央集権的に戻って行ったという系譜に、なぜ警察組織はこんなにも複雑なのかその理由がわかりました。
公安部だけが警察庁警備局警備企画課を頂点として、警視庁を含めた各県警を従え、人事権も含めてピラミッド型に運営されている、しかも公安部のトップはエリートコースで、のちに内閣情報調査への出向や政治家への転身を図る人も多くいるという話には震えました。
陰謀とまでは言いませんが、権力の側としての後ろ暗さがそれなりにあるんですよね。
そもそも組織的な政治思想犯を追うのが考案の役目であって、未だに最も調査しているのが共産党というところを鑑みると、公安警察という組織そのものは、一般人との感覚からはかけ離れた存在であるようにも思えますが、海外からのスパイやテロなどを考えると、これからは身近な話になってくるかもしれませんね。
色々と勉強になりました。