「サイコパスの真実」
著 原田隆之
もはや映画やドラマなど色々なところで口にされ、一般的に知られるようになった「サイコパス」。
ただ多くの人が漠然としてしかこの言葉の意味を知らず、何となく良心なく殺人などの重犯罪を簡単に犯す怖い人という印象だけが独り歩きしているような気がします。
この本では、そんな「サイコパス」について、今現在研究が進んでいるところまでしっかりと説明してくれています。
いわゆる犯罪者とまではいえない「マイルド・サイコパス」まで含めると、その比率が人口の約1%程度いることは個人的には知っていました。
ただこの本を読んで初めて知って驚いたのは、サイコパスの原因がほぼ遺伝であるという事実。
具体的に説明すると、まず脳の大脳辺縁系にある扁桃体が萎縮しているという点。
扁桃体は感情を司る部位なので、この部位の機能が乏しいと感情的に乏しい人間になってしまうんですよね。
他人との共感力が著しく欠けているとされる「サイコパス」には当てはまりますね。
ただ扁桃体の委縮の原因は遺伝とは限りません。
外傷などによって起こることもありますし、胎児期における母体のアルコールやニコチンなどの大量摂取による影響も考えられます。
また扁桃体が萎縮していることだけが「サイコパス」の原因とは言えません。
遺伝という意味では、扁桃体よりも、怒りや興奮などの感情を調節するセロトニンやドーパミンなど分解する酵素を産出する遺伝子に問題があるそうです。
この遺伝子には短形と長形があり、長形を持つ遺伝子を持つ人が攻撃的になってしまうそうなんです。
つまり「サイコパス」の病因には、
1.扁桃体の機能異常
2.控訴を算出する遺伝子異常
という二つの種があり、ここに虐待などの環境要因が重なることによって、犯罪をいとも簡単に犯す「サイコパス」が出来上がってしまうと言うわけです。
逆に言えば、環境要因がなければ、「サイコパス」の種を持っていても、犯罪を犯すまでになる可能性は少なく、いわゆる「マイルド・サイコパス」になる可能性が高いと言うわけです。
うーん、ひと口に「サイコパス」といっても、千差万別というわけなんですね。
そしてここまで説明をしたところで、どうしても考えてしまうのは、「サイコパス」に遺伝子的な要因があり、それが証明されれば、たとえ犯罪を犯しても罪を問われないかもしれないという可能性です。
まあ、現状、精神的な疾患がある人が罪に問われないというのと一緒ですね。
これは難しい問題ですよね。
理屈的には、確かにそうなんですよね。
ただだからといって、「サイコパス」を野放しにしてしまえば、被害者が増える一方であるわけですし……。
ただ現状では人権意識の高い欧米であっても、「サイコパス」はより厳しい罪に問われ、出所後の監視の目も厳しいようです。
でも、これから先、「サイコパス」についてもっと色々なことがわかってくると、どうなるかわかりませんね。
最後にこの本に書かれている種としての「サイコパス」という話には考えさせられました。
確かに暴力が当たり前のようにはびこっていた近代以前において、「サイコパス」であることが生物学的な一つの進化であったということ、つまりより生き残る確率を高めるために遺伝子的に変異をして「サイコパス」になった人間がいて、そうした人間の遺伝子が今なお、受け継がれているという話には、納得させれます。
歴史とか勉強していると、時々「サイコパス」としか言いようのない残虐な歴史上の人物って結構いますしね。
そしてそれどころじゃなく、現代の政治家や企業のトップにもそれっぽい人はたくさんいるかも……ていうか、いますね。
すぐに顔が思い浮かぶ人、たくさんいますしね。
「サイコパス」の遺伝子を持っているからと言って、イコール差別するっていうのは、ダメだと思うけれど、でも、「サイコパス」に権力を与えない仕組みを作るのは非常に大事かもしれませんね。