幕末から西南戦争で活躍した薩摩の桐野利秋を掘り下げた本です。
桐野と言えば、西南戦争で事実上薩軍を指揮し、その戦略なき戦い方が批判されている人として有名ですね。
たぶんにそれは司馬遼太郎さんの「翔ぶがごとく」の影響が強いことは否めませんが、西南戦争における桐野の戦略のまずさはその通りだと思います。
面白かったのは、実は桐野自身は当初は戦争にそれほど前向きではなかった点。
実は辺見十郎太や別府晋介ら中堅幹部ら首謀者として西南戦争を引き起こしたという話は、説得力があって面白かったです。
西郷が神輿に乗せられていただけの話だというのはあまりに有名な話ですが、その神輿を率先して担いでいたとされる桐野もまた辺見らによって乗せられていたというのは、後年、血気盛んな若者が2.26事件などを起こしたことなどを考えるとありえる話だと思いました。
また桐野がまだ中村半次郎という名で活躍していた幕末においての話も面白かったです。
中村半次郎と言えば、確かに人斬りのイメージが強いのですが、それは後年の創作によってつけられたもので、その役目のほとんどが密偵だったというのは非常に興味深かったです。
確かに人斬り風情が維新後に陸軍少将に栄達するわけがなく、そもそも桐野の出自もそこまで低くはなく、密偵、軍人として結果を出してきたからこそ西郷の側近になったと考える方が自然ですね。
桐野利秋のイメージが大幅に変わる本でした。