「維新政府の密偵たち 御庭番と警察のあいだ」
著 大日方純夫
まさに忘れられた歴史の話ですね。
江戸時代に幕府の諜報機関として有名なのはいわゆる御庭番衆と呼ばれる人たちです。
これは色々なドラマに出て来るので有名ですね。
漫画「るろうに剣心」にも登場します。
そしてその現代の御庭番の役目は警視庁公安部ということになりますが、この本で主題となっているのは、御庭番と警察の間の話です。
わずかな時間であるが故に忘れさられた話であるのですが、この時期に諜報機関がなかったわけではありません。
むしろ維新政府が出来上がったばかりで、不平士族や農民の反乱、キリスト教の布教、民権運動など日本中で問題が沸き起こっていたので、諜報は非常に重要でした。
そして、この時期にその諜報をになっていたのが、「監部」と呼ばれる機関です。
当時の国の中枢である太政官正院の課の一つとして創設されています。
まあ、現実に言えば、その前に司法機関である禅正台という機関があり、維新直後において旧幕府の残党などを摘発していたのですが、廃藩置県の改革の際にこれは廃止され、それに代わるものとして政府中枢の直属の機関として監部が生れたというわけです。
この本ではその監部にはどういった人物がいて、どうのような活動をしていたのかを出来得る限りの資料を集めて詳細に描かれています。
改めて明治の時代の新たな一面を垣間見た感じがして興味深かったです。
監部が大隈重信ら、時の権力者と密接に結びついていたというのも面白かったし、諜報機関が警察に移っていく中で、役目を終えた監部の人間たちのその後の話もとても面白かったです。
歴史探索の好きな人には非常におススメの一冊ですね。