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弦巻 星之介

「同調圧力 日本社会はなせ息苦しいのか」 著 鴻上尚史 佐藤直樹

「同調圧力 日本社会はなせ息苦しいのか」  著 鴻上尚史 佐藤直樹 やや日本の社会をディスりすぎているような気もしなくもないですが、概ねこの本で言っていることは正しいと思います。 コロナ禍でとても息苦しい思いをした人はたくさんいると思いますが、なぜ息苦しいのかをよく説明してくれている本です。 個人的にも考えていたことをこの本を読んだことによって頭の中でうまく整理出来たような気がします。 特に「社会 […]

自助・共助・公助を考える。

菅さんが首相になってしばらく経ちました。 支持率は思った以上に高いのですが、とりあえずまずはしばらく様子を見てからちゃんとやれる人なのか評価をしたいところですね。 さて菅さんが自民党の総裁選挙に臨むに当たって公表したスローガンがネット上でフツフツと物議を醸しだしています。 「自助・共助・公助」というやつですね。 自助は自分でやれることは自分でやれということ。 共助は家族や地域コミュニティなどお互い […]

「大人は判ってくれない」 

「大人は判ってくれない」 1960/フランス ゴダールと並び立つヌーヴェルヴァーグの巨匠フランソワ・トリュフォーの初の長編映画です。ヌーヴェルヴァーグのキッカケであり、この映画が評価されたからこそ、ヌーヴェルヴァーグの潮流が生まれたんですね。 話としては、トリュフォー自身の経験が下地になっています。大人の都合で振り回される子ども。大人は決して子どもの話を聞こうとせずに、力で子どもを従わせることばか […]

「笛吹川」 著 深沢七郎

「笛吹川」  著 深沢七郎 「楢山節考」を書いた深沢七郎さんの作品です。 なので結構古い作品なのですが、わたしがなぜこの本を読んだのかというと、わたしの父方の先祖と思しき人間がこの小説に出て来るからです。 その名は土屋惣藏。 史実では武田二十四将の一人である土屋昌続の弟であり、信玄が死に、長篠の戦で武田が敗れた後も武田に付き従った武将ということになっています。 この人が有名なのは、武田家最後の家臣 […]

「歪んだ正義 「普通の人」がなぜ過激化するのか」 著 大治朋子

「歪んだ正義 「普通の人」がなぜ過激化するのか」  著 大治朋子 非常に興味深い本でした。 著者は毎日新聞の記者なんですけれど、特派員としてイスラエルや中東地域を取材している人で、休職をしてテルアビブの大学院で危機・トラウマ学を勉強した人です。 組織に属することなく、単独でテロを起こす人(いわゆるローンウルフ)が日常的に多い、パレスチナ・イスラエルの地区において、彼らローンウルフがどうしてテロを行 […]

「万引き家族」

「万引き家族」 2018年/日本 いやあ、とてもよかったです。そしてとても考えさせられる映画でした。 もともと是枝裕和監督の映画は大好きなのですが、期待に裏切らない素晴らしい映画です。 ドキュメンタリー出身の監督らしく、社会のリアルをうまくドラマに仕立て上げていると思います。 確かに万引きした家族があり、その家族は実は、、、という設定はありえないようにも見えますが、実際にその一人一人の家族の裏にあ […]

「三体Ⅱ 黒暗森林」 著 劉慈欣

「三体Ⅱ 黒暗森林」  著 劉慈欣 単純に読み物としてとても面白かったです。どんどん読み進めることが出来ました。天文学や物理学の知識がふんだんに使われていますが、物語そのものが分かりやすく、しっかりと編み込まれているので理系の人じゃなくても十分に楽しめる本だと思います。 あとがきにも書いてありますが、この作者のいいところは、二項対立をわかりやすく提示し、それを物語の中でうまく使っていくところです。 […]

「パラサイト 半地下の家族」

「パラサイト 半地下の家族」 2020年/韓国 単純にストーリーとしては面白い作品だと思いました。韓国映画っぽさにアメリカのエンタメの論理がうまくブレンドされたような感じで、最初から映画に入りやすく、また最後まで食い入るように観ることが出来る作品だと思います。 特にストーリーの下地となっているシチュエーションの作り方が絶妙で、韓国独特の半地下や核シェルターのある豪邸、そして異常なほどの格差という社 […]

「ある一生」 著 ローベルト・ゼーターラー

「ある一生」  著 ローベルト・ゼーターラー 久しぶりに文学を読んだな、っていう気持ちにさせてくれた小説でした。 内容そのものは、あまりに平凡な男の人生を追っているだけの淡々とした物語なのですが、それが妙に引きつけられ、まるで我がごとのような気持になって、彼の人生を追ってしまうんですよね。 この小説を読んでいて、絶えず意識させられるのは時間です。 そもそも一人の人間の一生をテーマにしているのだから […]

「大分断 教育がもたらす新たな階級化社会」 著 エマニュエル・トッド

「大分断 教育がもたらす新たな階級化社会」  著 エマニュエル・トッド とても興味深い本でした。本の副題通りに教育が新たな階級化社会を生み出してしまっているということを主張している本なのですが、その通りだと思います。 ほとんどの国のエリート校には、莫大な投資とそれなりの文化資本がなければそもそも入学できず、そしてエリート校を卒業した人々が政治経済の中枢を牛耳っている。つまり既得権益を持つ人間たちの […]