「ケーキの切れない非行少年たち」 著 宮口幸治

「ケーキの切れない非行少年たち」 
著 宮口幸治

これはとてもいい本でした。ていうか、新書で読みやすいので、出来る限り多くの人に読んでもらいたいなと思わせる本でした。
認知行動療法に疑問を抱き始めた精神科医が、実際に医療少年院で働いたことで気が付き、行動したことが書かれているのですが、何かこれまで知っていた非行少年のイメージが変わってしまいました。
現在、精神科では認知行動療法というのが治療として行われているのですが、これは認知の歪みを患者に認識させて、それを矯正させることで治療していくというものです。
実際に、これで症状がよくなる人もいるにはいます。
ただ、この作者の先生は、それがあまり非行少年には効かないことを感じて、どうしてだろう?と悩んだ末に、気づいてしまうんですよね。
非行少年の多くが、そもそも軽度の知的障害を負っている子が多く、そもそも認知が歪んでいるのではなく、認知が出来ていないのだと。
そして、認知が出来ないのに、勉強しろとか、何でわからないんだ、とか言われ続けて、それがストレスになり、窃盗や障害、性犯罪などに手を染めるという負の連鎖に陥ってしまう。この本では、具体例を多く上げ、それが事実であるいう説得力のある説明をしています。
またじゃあ、そんな彼らに対してどういう治療をすればいいのかという目から鱗の方法も。
確かに、そもそも認知の出来ていない子どもたちを早くから見つけ出し、適切な治療をすれば、犯罪者予備軍が大幅に減るだけでなく、逆に彼らが社会に貢献できるようになるのだから、これは絶対にみんなが知らなきゃいけない話だと思いました。
この先生が今推奨しているコグトレというトレーニング法があるのですけれど、これは本当に世界中に広まってほしいアプローチですね。