岸田首相「新自由主義からの転換」に噛みつく楽天三木谷氏の時代錯誤性と身勝手さ

楽天・三木谷氏 岸田首相の〝新資本主義〟を痛烈批判「新社会主義にしか聞こえない」

楽天の三木谷社長が岸田首相の「新自由主義からの転換」という政策について批判しています。
批判の内容は、

・新政権の発表は、新資本主義ではなく、新社会主義にしか聞こえない
・金融市場を崩壊させてどうするのか??それとなぜこのような事が総裁選で議論されなかったのか??
・給与や金利などは会社では損金算入されているにもかかわらず、受け取り側に課税するという二重課税をさらに上げるという愚策。全く資本主義が理解できていないのでは?

と簡単にまとめるとこんな感じです。
三木谷さんのように経営者側の立場からすれば、こう考える人も確かにいるでしょう。
でもこれは、ハッキリ言って法人税が下がり、株価が上がったことで恩恵を受けていた人たちによる不満です。
それでは社会が良くならない、という批判ではなく、そんなことをすれば自分たちが今まで通り儲けられなくなるということに対する批判なんですよね。

三木谷さんは「新自由主義からの転換を目指す」岸田首相に対して、「資本主義が理解出来ていない」と言っていますが、わたしからすれば、資本主義の本来の意味を分かっていないのは間違いなく三木谷さんの方であると思うし、三木谷さんは自分にとって都合のいい意味でしか資本主義を理解していないと思います。
それどころか社会主義の意味も理解していないのではないでしょうか。
社会主義って言葉を使えば、誰もがアレルギーを起こすとでも思っているんですかね。

そもそも資本主義とは、開発が必要なところに資本を投資して発展させることであり、余ったお金で投資をして、色々と開発し、みんなが豊かになっていくということを目指すやり方です。
当然誤ったやり方で開発を乱立させれば、需要と供給が上手くいかずに発展どころか負の遺産を残しますし、一部の人だけが儲かる格差社会を拡大化させていけば、市場は縮小しますし、社会不安は増大し、結局景気は後退していき、企業は打撃を受けることになります。

これに地球に対する環境破壊も相まって、欧米諸国は軒並み、これまでの新自由主義一辺倒の考え方を改めて、方向転換をしようとしているのであり、岸田首相も一部の富裕層のためにではなく、日本全体のことを考えて新自由主義から転換するべきだと言っているのです。
これまで新自由主義に乗っかって、うまくいっていた人たちは、何かといえばトリクルダウン理論(企業や富裕層が豊かになれば、その恩恵は中流・下流も受けられる)をふりかざしていますが、もうその理論は嘘だということも既成の事実なんですよね。
つまり、儲けている人たちは、さらに儲けることしか考えておらず、社会のことなど知ったこっちゃないんです。
弱者が食われるのが当たり前だという考え方なんです。
でも、それを正当化して、社会の常識にしてしまえば、勝ち続けない限りはやがては自分の首を絞めることになるんですよ。
岸田首相が今「新自由主義からの転換」を叫んでいるのは、それは国民全体にとって不利益だという話だし、そうした社会にならないためにどうすればいいのかを世の中に問うているのです。

第一、三木谷さんは二重課税とか言っているけれど、そもそもお金が動くということは税金を取られるということなんですよね。
なんで配当金の受け取り側が課税されなきゃいけないんだとか言っているけれど、一般庶民だって、所得税という形で収入があれば課税されています。
配当金に対して十分な課税がされないということは、何で、株で儲けた人間だけが特別扱いされるんだって話になるんです。

それに税金を取られることに対しても文句を言っていますが、税金を徴収するということでこの国は成り立っているのであり、この国が成り立っているからこそ、楽天は商売が出来ているんですよね。
自分たちは国家の上に乗っかって安心して商売したい。
でも税金は払いたくないっていうのは、かなり勝手な言い分ですし、そもそも税金というもの意味をこの方はわかっていないのではないでしょうか。

三木谷さんにはぜひ新自由主義によって世界中で法人税減税競争になった結果、日本がどうなったのかもよく考えてほしいですね。
それまで法人税でそれなりにとられていたから、企業は税金で持って行かれるよりは必要経費として設備投資や従業員の給料を上げようと考えたり、取引先へ優越的地位の乱用などをせずに、きちんと支払い、交際費も使っていたのであり、その結果として経済は好循環に回っていたんです。
でも法人税で持っていかれなくなったら、経費を増やす必要なくなって、人件費や取引先への支払いを下げに下げ、交際費を絞り、企業は貯め込むだけ貯め込んで内部留保だけが積み上がって行ったんです。
そして庶民に行き渡るお金が減れば消費が下がり、デフレが起こって歯止めがきかなくなっているんです。

先日OECD加盟国が法人税減税競争に歯止めをかけるべく法人税最低税率15%という国際ルールに合意しました。タックスヘイブン対策についても始まっています。
これが今の時代の流れであり、自分たちさえ儲ければいいという三木谷さんのような考え方は、もはや時代錯誤甚だしく、これからの世界や日本に望まれるタイプの経営者ではないんですよね。

しかも岸田首相は、賃上げをする企業には税制的に優遇すると言っているので、一方的に税金だけを上げているわけではないんです。
それを分かっている上で、批判するということは、楽天は賃上げそのものに反対し、あくまで自分たちの会社さえよければいいと考えているということでしょうか。

とにかく法人税や累進課税強化、内部留保や配当金に対する課税の強化も必要です。
その分、賃上げをちゃんとした企業に対しては、税制優遇をする。

そんなことをしたら、企業が日本から出ていく。
そういう経営者もいるでしょう。
でも、そもそも今、世界もそうした方向にシフトしているんですよ。
第一、そんなことを言える企業は、大抵は多国籍企業であり、そうした会社はそもそも国家に税金を落としていないことも多いですしね。

自分たちさえよければいいという目先の考え方をする人こそが、社会を不平等で先の見えない状態にしてしまうんです。
かつて渋沢栄一さんや松下幸之助さんなどの日本の名だたる経済人は、儲けることと社会が豊かになることを同時に考えていました。
そんな偉人たちと比べちゃ悪いのかもしれませんが、三木谷さんのツイートを読んでしまうと、正直ちょっと器の小ささを感じてしまいますね。