「スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか」
著 池谷孝司
今の日本の世の中にとって必要な本とは、こういう本のことをいうのだと思います。
まず教室のわいせつ行為の事例が次々と書かれているのですが、その卑劣な犯行ぶりが実に酷い。ただでさえ、わいせつ行為は卑劣なのですが、それが学校という教育の現場で、教師という強い立場を利用して行われていたという話であるのなら、本当に救いようのない話なんですよね。
しかも当の加害者たちに、自分たちが教師としての権力を持っているということを自覚せずに、多くの場合は犯行が行われているので開いた口も塞がりません。
著者も提唱していますが、やはり教育者に対する教育であったり、そもそもの教育方法が今のままでいいのかということをもっとよく考なきゃいけないですよね。
じゃないと、どんどん被害者が出て来るだけですから。教師には、この本を読むことを義務化してもいいくらいですよ、ホント。
学校だけでなく、教師―生徒のような支配関係は、生きていればどこにでもある関係です。セクハラに限らず、そこでは力を持っている人間がその使い方を誤ると、弱い人間にとってはとんでもないくらいの悪影響を及ぼします。
普段、セクハラなんて関係ないと思っている男性にとっては、そんな話をされても、自分には関係ないと思われるのかもしれません。でも、たとえば会社での上下関係や虐めの問題、その他家庭内での問題などでも、この支配被支配の問題は必ずや必ずや顔を出すのです。
だから、自分に関係ないで終わらせるのではなく、まずはこういう本を手に取って読んでほしいですね。
そして、自分の目の前で行われていることだけが世界の全てではなく、自分の見えないところで様々な問題が今現在も起きているのかと言うことを知ってほしいです。
これは、わたし自身にとっての言葉でもあるのですが、そういう姿勢を常日頃忘れずに生きていきたいですね。
この本に出て来る、加害者の犯行ぶりは本当に酷いものばかりでしたが、それでもこの状態を何とかしようと立ち上がっている人たちもたくさんいて、そういう人たちの活動をこの本を通じて知ることで勇気も得ました。
出版不況が言われて久しいですが、こういう意味のある本が多くの人に読まれるといいです。