「事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響の科学」
著 ターリ・シャーロット
本のタイトルが気になって読んだのですが、面白かったです。
確かにどんなに事実であったり、科学的に正しいことを言ったとしても、相手が絶対に納得しないって、多くの人が経験したことがあることですよね。
その人が持つ元々のバイアスを変えることって、決して不可能ではないのですが、相当難しい。
むしろ、正しいことを言われれば言われる程、感情的になり、逆に絶対に認めない、そして話のポイントをうまくズラして反駁を加え、結局水掛け論になって、最悪喧嘩になりというね……。
この本では、そうした脳の動きが人間誰にでもあること、つまりはそもそも人間に具わってしまっている脳の在り方であることを様々な実験結果から検証して証明しています。
まあ、ようするに人間誰もが、「あいつはわからない奴だ。何を言っても聞き訳がない」と相手に思うことがあっても、実際多かれ少なかれ、自分自身の脳にも間違いなくバイアスがあり、そうした傾向があるという話です。
そして、それを理解した上で、いかに人と話すべきなのか。この本はそれを解決はしてくれないものの、そのヒントを科学的に示してくれています。
一方的な政治主張やポピュリズム、そして排他主義がまかり通る、今の世の中で、今一度自分たち自身のことを振る変えるために必要な本ですね。
みんなが自分にもバイアスがあることを前提に考えて話せば、他人の話も素直に受け入れられるようになるはずなんです。
その謙虚さみたいなもの、情報によってマウンティングを取るのではなく、あくまで話し合いをして双方の落としどころをさぐるという考えたを持てば、世界はとても平和になるはずなんです。
でも、多くの人が勝ち負けで決める。相手を論破する。力で支配する。
今一度、本当に自分のバイアスが正しいのか、誰もが立ち止まってよく考えなくてはいけませんね。
素直にそんなことを感じさせてくれる本でした。
そういったことを全部分かった上で、人の感情をうまく動かして悪用する人が出てこないか、ちょっと怖さも感じますが。