増田残留で潮目が変わる!? なぜ西武にFA移籍が多いのか?

いやあ、ついに増田選手の残留正式発表が来ましたね!
この時期、毎年のように暗い気持ちになる一方だった西武ファンにとっては待望の朗報です!
増田選手、残ってくれて本当にありがとうです!
中村選手や栗山選手に続いて、このままレジェンドになってほしいですね。セーブで名球会を目指してほしいです。

さて、今年の増田選手は残ってくれましたが、それにしても西武はなぜこうもFA移籍が多いのでしょう。
何か西武だけFAになると自動的に出て行くようなシステムがあるような感じです。
単純に、他球団が欲しがるほどの選手を育成しているというのはあるかもしれませんが、どうして西武の選手はこうもFAで出ていってしまう選手が多いのか。

最初にパッと浮かぶのはお金の問題です。単純に西武がケチだからという理由をつければ、話は簡単に納得出来るし、西武からFAで選手を獲得する球団のファンからしてみても、逃げられる西武が悪いと後ろめたさを解消出来ます。確かに上場が廃止され、サーベラスというハゲタカファンドに首根っこを掴まれていた時期は、なかなか高額な金額で選手と契約するのが難しかったと思います。ただお金の問題だけだとすると、西武よりも金払いが悪い球団はいくつもあります。さすがにソフトバンクなどには及ばなくても、西武の親会社はそこまで貧乏な会社じゃありません。それにも関わらず西武だけが、という話になるとやはり西武特有の理由があると思うんですよね。

では、お金の問題以外で西武の選手が移籍を選ぶ理由は何なのか?

この疑問に対して、様々な記事を読む中で、一つのヒントを与えてくれるのは、森友哉選手のコメントです。森選手曰くチーム内にはFAに関して移籍をすることが容認されている空気があるそうです。極めて日本人っぽい話ですが、この当事者たちの間でどういう空気が流れているのかってとても重要なんですよね。

少し前の話ですが、中日の大野選手が日ハムからFA移籍する際に、先輩同僚の稲葉選手の奥さんから移籍しないよう圧力があったという報道がありました。真偽のほどはわかりませんが、日本的な感覚を考えると、多かれ少なかれそうした圧力があると考えた方が自然なんですよね。FAやポスティングでの多数の移籍者を出している日ハムですらそのような報道が出るくらいですから、これが巨人や阪神といった伝統的な人気球団だとすると、想像するのも怖いですね。確かに、選手の権利と言いながらも、移籍をしにくい空気というのは確かに存在するんだと思います。

そうなると、なぜ西武だけがその空気が薄いのかという話になります。今となっては多数の移籍者を出すことで移籍容認のチーム内での空気が助長されていることは想像出来ますが、それならばなぜそもそもこのチームだけが日本的な感覚から逃れて、FAにポジティブになっているのでしょうか?

個人的にはFA制度が始まったタイミングが西武にとって最悪だったということが関係あると思っています。

FA制度が始まったのは1993年です。この年は西武が日本シリーズでヤクルトで負けた年で、80年代から90年代半ばまで続いていた黄金時代に陰りが見えてきた年です。そのタイミングでFAが始まった。つまり、黄金期の屋台骨を支えてきた選手が脂が乗り切ったところでFA資格を得てしまったわけですね。

まず移籍したのは、クリーンナップを打って、清原選手とてもにチームの顔だった秋山選手。実際はダイエーへのトレード移籍でしたが、FA資格取得後、巨人への移籍が噂されていたので、球団が先手を取った形です。FAの影響と言っていいでしょう。次いで94年オフにはチームリーダーの石毛選手、左のエースの工藤選手、さらに96年オフにはチームの看板だった清原選手と、黄金時代の中心だった選手たちが軒並み移籍をしてしまったんですね。これがチーム内に移籍はするべきものなんだという流れを生んだのは間違いないでしょう。さらにメジャーで野茂選手が活躍して以降は、FAやポスティングでのメジャー移籍の波が押し寄せます。西武はここでも、FAで松井選手、中島選手、ポスティングで松坂選手と看板プレーヤーを次々に失い続けます。もちろんこの間に前述したハゲタカファンドによる支配で年俸が抑えられたり、フロントによるパワハラまがいな言動が絶えずあったり、施設が老朽化してきたりと、様々な移籍の理由となるものが浮かんできますが、まずはそもそもタイミング的にFA制度始まりの当初から主力の移籍が相次いでしまったことで、選手の間に移籍はしてもいいんだという空気が語り継がれていってしまったこと、そして出ていくことで若い選手が台頭しているという新陳代謝を見て、むしろ自分たちが移籍することに対する肯定感が生まれ、そうした心情が結果的に数多くの移籍を生んだ多い大きな要因になってるのだと思います。

そしてこれらの系譜からなる移籍の流れは、涌井選手、片岡選手、岸選手、浅村選手、秋山選手などと今も主力選手を中心に止まっていません。

ただ西武球団に関する事情は変わってきています。大きいのが、最上場したことにより、親会社がサーベラスというハゲタカファンドの支配から逃れたこと。これにより、それなりに資金を使えるようになり、また球団そのものも企業努力によって近年は黒字経営化してきています。

またフロントもパワハラ疑惑があった人たちがいなくなり、元エースで、監督でもあった渡辺久信氏がGMに就任することで、より選手の心情によりそった交渉が行われるようになったそうです。

これらの変化は、昨年の十亀選手、金子選手、そして今年の増田選手のFA移籍を引き留めたことでも明らかな手応えとして感じられるでしょう。

特に増田選手のように多くの他球団が欲しがる選手を引き留められたことはファンやほかの選手へのメッセージとしても大きいです。

順調にいけば、22年オフに外崎選手、23年オフに山川選手、森選手の国内FA資格が満たされます。特に森選手は、打てる捕手であり、20代での取得となるのでオファーが殺到するでしょう。果たしてその時に西武は今までとは違って引き留められるか。

西武ファンとしては、ドキドキですね。

関連記事
西武山賊打線がたった2年で弱体化してしまった理由
楽天浅村が西武ファンに嫌われてしまっていることから見えるプロ野球の問題点
ソフトバンクホークスはなぜここまで強いのか。①その理由
ソフトバンクホークスはなぜここまで強いのか ②他球団はどう対抗すればいいのか?