「飛ぶ教室」 著 ひらまつつとむ

「飛ぶ教室」
著 ひらまつつとむ

30年以上前に少年ジャンプで連載された話です。
単行本にしてわずか2巻分の長さしかありませんが、その短い間の連載で少年時代のわたしに無茶苦茶インパクトを残した話でした。
「キン肉マン」「ドラゴンボール」「聖闘士星矢」とジャンプ前世の時代ですが、それらに負けるとも劣らないくらいの印象を残していますね。

物語の舞台は、1980年代。まだまだ米ソの冷戦が続いている中でいきなり世界中が核戦争に見舞われるというところから話は始まります。
たまたまシェルターにいたために生き残ってしまった少年少女たちの奮闘が始まるわけなんですが、それが妙にリアルで、少年漫画にあるまじく、核戦争の恐怖などもしっかりと描いているんですね。
もちろん漫画っぽい明るさもあるにはあるのですが、物語の話が話だけにその明るさも妙に哀しく映ります。
主人公たちは小学6年生なんですが、彼らも子供であるにも関わらず、立場上、年少者たちを指導しなければいけないことから健気に弱さを隠しつつも成長していく姿が心を打たれるんですよね。

個人的に秀逸だと思ったのが、主人公のガールフレンドであるみつ子の描き方でした。
何の取り柄もない弱気でドジな主人公に対し、互いに思いやることで勇気づけるひたむきな純情さに当時惹かれた少年たちは多かったのではないでしょうか。
ガールフレンドにあんな風に好かれたら本望だなって、当時のわたしはかなりオサムを羨ましく思っていたことをよく覚えています。
物語の背景やテーマが重苦しいものであるにもかかわらず、この物語に希望を持って読むことが出来るのは、間違いなくみつ子のキャラによるところが大きいですね。

それにしても、ジャンプ全盛期にさらりとこういう漫画を短気ながらも連載していた少年ジャンプはすごいですね……。
ただぼくの中では「はるかかなた」と並んでこの漫画にはもっと連載を続けて欲しかったです。
ちなみにこの漫画の作中で、ハインラインの「夏への扉」が触れられていますが、わたしはここでハインラインを知り、「夏への扉」を読んだことを覚えています。
その「夏への扉」が最近実写映画化されたり、アニメ化されたりしているのを見ると、ちょっと感慨深いですね。