自民党総裁選が終わり、岸田文雄新総裁が誕生しましたね。
総裁選の結果を見て、まず気になったのは、やはり国会議員票と世論を反映するとされている党員票の乖離です。
今回だけならともかく毎回のようにこんな感じで、しかも決選投票ではいつも派閥の論理でひっくり返すことが出来るとなると、正直これが民主主義的なやり方なのかなと思っています。
今回、その顕著な例は河野さんの票数というわけですが、党員票で予想よりも低かったものの、一番得票をしたのは河野さんであり、多くの党員が自民党の党風の一新と若返りを願っていることが簡単に類推されます。
その一方で河野さんの議員票は3位に沈み、議員票がより効果を発揮する決選投票では大差で敗れました。
これは国会議員の、党の改革を進めようとする河野だけには当然させるなという意志の現れです。あくまで民意の反映が乏しく、国会議員の意思がより濃く反映されるシステムになってしまっています。
さらに今回の総裁選でさらに明らかになったのが、その民意すらも実際とはズレた形で喧伝されてしまっているかもしれないという事実です。
今回の選挙で台風の目となったのは、高市早苗さんでした。
当初は泡沫候補と思われていたのが、安倍元首相が後ろ盾になるや、ネット上でいわゆるネトウヨと呼ばれる保守強硬派の人々から絶大な支持を得ることに成功し、あれよあれよと言う間に、総裁選を左右する立場にまでのし上がりました。
ネット上のコメント欄などでは、まるで民意としてはすでに高市さんが選ばれているかのように語られ、一方で既存のメディアが本当のことを報じていないと断罪し、対立候補の河野さんに対しては、もはやヘイトにしか見えない口調であることないことで批判していました。
しかし党員票では、河野さんの圧勝で、高市さんは三位に甘んじています。
つまりはあれだけ世論の支持を得たと騒いでおきながら、結果的には一部の保守強硬派の人たちを中心にしか支持を得られていなかったという事実がここにあります。
極端な意見を持つ人たちがネットなどで大きく騒ぎ立てることで、さも世の中の多くの人がそう思っていると思い込ませ、自分たちの考えこそがもはや常識なのだという雰囲気を醸し出していく。
これは世界中の極右勢力がよくやる手法ですし、左サイドの人たちもよく使います。
民主主義の危機があるのはこのあたりなんですよね。
議論をする前に、とにかく自分たちの意見に従わせようと大きく騒ぎ、力でねじ伏せるということなんてやっていれば、そのうちホントに国が滅びますよ。
まあ、結果的に河野さんでも高市さんでもなく、岸田さんになったというのは、社会分断が進んでいる今、ちょうどよい落としどころだったのかもしれませんが。
さて、これで岸田内閣が誕生するわけですが、個人的には岸田さんの政策そのものには共感しているので、頑張ってほしいと思っています。
新自由主義を決別し、中間層の所得を倍増させる。
難しいとは思いますが、今、絶対にやらなきゃいけないことはこれです。
ますこれをやらなきゃ、少子高齢化も止まりませんからね。
個人的には最低賃金全国一律時給1,500円以上と大学などの高等教育の無償化はやってほしいです。
まあ、さすがにここまでは無理かもしれませんが、言ったからには、それなりに気概を見せてほしいですね。
問題はどれだけ安倍氏や麻生氏などの影響から離れ、自分らしい政策を打ち出して行けるかですね。
速報では、幹事長に甘利氏、政調会長に高市氏、総務会長に福田氏という話になっています。
甘利氏は麻生派閥、高市氏は安倍氏の秘蔵っ子なので、ここで2Aに配慮したということでしょう。
麻生さんは副総裁にもなっていますしね。
ただうまいと思ったのは、残る総務会長に福田氏を抜擢した点です。
福田赳夫の孫で、福田康夫の息子という政界のサラブレッドであり、安倍さんとは対立軸にある人をあえて党三役の一角に入れることで絶妙なバランスを取っているんですね。
また党風一新会のリーダーである福田さんを起用することで、中堅・若手の議員に配慮したという点もいいと思います。
何げに高市さんや麻生さんを重要ポストでありながら、国民の目にはなかなか映らないところに配置したというのも今後を考えればうまいやり方ですね。
ただ河野さんたちへの冷遇はあまりやり過ぎない方がいいとは思いますが。
保守派勢力を上手く取り込みながら、距離を置く。
そういうバランス感覚がリーダーに求められるものです。
そうやって地道にもはやボロボロになった日本のかじ取りを何とかうまくやって行ってほしいです。
とりあえず3年でうまくいかなければ、またアベノミクスとか言い出す人がたくさん出てきてしまいますからね。