知床遊覧船事故から見える日本社会凋落の理由

社長が代わり「全員解雇」運航会社“安全管理”に問題は…知床観光船事故11人死亡

非常に痛ましい事故です。
ただこの事故は運の悪さが原因ではなく、明らかに人災です。色々な取材がされる中で、運航会社が安全性よりも利益を優先させていたことは否めなくなってきましたね。
特にこの人材軽視の話には憤りを超えて呆れてしまいました。

ようするに、2年前に社長が代わるまではこの運航会社にはベテランの船乗りが何人も在籍していたそうですが、社長交代を境に給料の高い彼らは全員解雇され、みんなバイトに切り替わったそうです……。
結果一人頭30万超の給料が15万ぐらいに抑えられたので、経営としてはコストカットが出来たと当時は思ったのでしょうけれど、コロナで厳しかったとはいえ、これはホントに一番やってはいけないことですよ。
船会社なんで安全無事に航行することが前提であるのに、その安全面を切り売りしてしまったわけですからね。
言い訳が立ちません。
何か何年か前の軽井沢のバスの事故を思い出しました。
あれも運転手を安く買い叩いた結果起こった事故でしたね。

そう考えると、もはやこの話は日本社会の縮図のようにも見えてきますね。
バブル崩壊が崩壊し、少子高齢化が進んだ今、多くの会社で利益を上げるイコール人件費を切り詰めるという話になってしまっている。
確かに組織にとってときに人員を整理する必要が出てくることもあるかと思いますが、本来そういう場合、整理されるべきは高収入にも関わらず大した成果を出せていない人たちであるべきです。
ただ日本の場合、そうした人の多くは正社員で終身雇用制によって守られている。
その結果削られるのは、大抵現場の経験者で、そこをより安価な人材に取り替えることでしか利潤が出せなくなってきているんですね。

もはや経済システムとしては末期的な状態で、そこには生産性や効率性、それに持続可能性といったものもの感じません。
ただ惰性的に、今力を握っている人たちが、社会全体や次世代のことなど考えず、場当たり的に人材を削ることで会社を生き延ばせているに過ぎないと思います。

ハッキリいうと、もはや人を削ることでしか利潤を得られない経営者は、経営者としての資質を問われるべきなんじゃないでしょうか。
ただ日本の場合、ほとんどの企業が親族経営で、経営者に対してひたすら甘い。
この安易な人件費の削減でしか利潤を上げられないような経営者に対しては、社内でもどんどんと交代するように促していけるようなシステムにならないと厳しいですよ。

本当にこの人材を切り詰めることで、何とかしようという風潮はどうにかしてほしいですね。
商品やサービスに付加価値を持たせることや人を育てることを怠り、バブル崩壊以来人材を切り詰めることで何となくうまくやってきたからこそ日本が凋落してしまったという事実をいい加減、認識するべきだと思います。

ようするに、本部の給料だけが高くて、生産性のない経営陣や正社員を養うために、現場の経験のある人を切っているわけですからね。
会社を営む上で、何が大事なのか、どういう人材が必要なのかをホントによく考えてほしいです。