「華氏451度」 著 レイ・ブラッドベリ

「華氏451度」 
著 レイ・ブラッドベリ

SF小説の古典ですね。「火星年代記」のレイ・ブラッドベリの代表作です。
アメリカでは、国民的文学のとさえも言われている作品です。
ディストピアものとしては、オーウェルの「1984」と双璧ですね。
ヌーベルバーグの時代に、フランソワ・トリュフォーが映画化したことでも知られています。

さて、内容なんですが、いわゆる「焚書」がテーマである作品で、深いです。
本を焼くことを時の権力者がなぜ選ぶのか、そしてそれに対して、なぜ人々が盲目的に従ってしまうのか。
そこに人間の弱さが垣間見え、そして、それに抗う精神に、人間の強さが見えてきます。

細かい説明などはいらず、ただ人が生きることにとって何が大切であるのかということを感じとってもらいたい作品ですね。

主人公のモンターグの気持ちの変遷が、普遍的な人間の苦しみというか、悩みに聞こえてきます。
世界観そのものは、SFとして作る込まれたもので、現実をディフォルメさせたものなんですけれども、妙にその質感にリアリティを感じてしまうんですよね、この小説。

最近はSFというと、どうしても理科学的なリアリティを追求したものが多いのですが(それはそれで面白いのですが)、この作品のようにもはや哲学の域まで昇華している物語は、個人的には大好きです。
ていうか、SF小説の本来の醍醐味ってこういう話だと思うんですよね。
科学や文明の進化が、果たして人間を本当に幸せにするかどうかという。
そうした、人間の本質をつく、人類の宝のような本だと思います。