参院選で参政党が1議席獲得。なぜ左派政党は若者の支持を得られないのか。

参院選が終わりました。
安倍元首相が撃たれて亡くなった事件を受けてか、大方の予想通り自民党が圧勝しました。
一方で立憲民主党をはじめ左派政党が議席を減らすこともある程度予測が出来ましたが、個人的に最も驚かされたのは、泡沫候補と思われていた参政党が1議席を獲得したことです。

参政党はいわゆる戦前の右翼に似たような考え方を持つ団体なのですが、SNSなどを駆使した戦略でワクチン反対派や若者たちを取り込み支持を広げていったようです。
一昔前だと、格差がこれだけ進み、貧困が顕在化していった場合、左派政党が議席を伸ばすはずなのですが、立憲民主党の議席が大幅に減り、逆に新自由主義的な考えを持った維新が議席を増やし、右翼主義的な参政党が議席を獲得した。
なぜこのようなことになっているのか、特に参政党の支持が多いといわれる若者の気持ちを読み解くことで今後の趨勢と左派政党の課題が見えてくるように思います。

まずなぜ参政党に支持が集まったのかを考えるとき、それは必ずしも参政党の基本理念に心酔したというわけではなさそうだということです。
参政党の基本理念は昔ながらの天皇を中心とした右翼思想であり、それは決して目新しいものではありません。
もちろんそうした考え方に共鳴したという人もいるとは思いますが、基本的には現在の閉塞感を招いている与党は支持出来ない、かといって野党にも期待出来ない、そうした若者たちの受け皿としてSNSを巧みに使って情報発信した参政党が選ばれた可能性が高いんじゃないかと思います。そう考えるとそもそも問題は参政党云々というより、なぜ与党や野党に若者たちが期待をすることが出来ないかであり、そこの部分のなぜを突っ込んで考えてみる必要があると思います。

なぜ若者が既成政党に参加をしないのか、それは若者たちの立場になってみれば簡単にわかります。ようするに少子高齢化が放置されている今、既成政党はシルバー民主主義と言われているくらい、老人寄りの政策に偏っているからです。
そりゃそうですよね。若者からしてみたら、物心ついた時には、日本が豊かだった時代が終わっており、大人になったら、少ない人数で老人たちの面倒を見てくれっていう話なんですから。
みんな、平等と言われても、自分たちが割を食ってしまうと思っているんです。
そもそも極左でもない限り、みんな平等という考えではなく、あくまで最低限の保障をどこに置くのかという話を左派政党の多くはしているのですが、どうしてもソビエトの失敗の印象と、その後の右派のプロパガンダによって、そういうイメージが固定されてしまっていて、それを払拭出来てないんですよね。

そんな若者たちにリベラルな大人たちは「民主主義なんだから、投票に行って世の中を変えればいい」と口をそろえて言います。
でも、残念ながらこの国の人口バランスは圧倒的に中年より上の世代の方が多く、どうやっても多勢に無勢なんです。
その上、会社では、自分より年上の人たちから年功序列のシステムに押し込まれて圧迫されていることが多いわけですからね。

そんなメンタルな若者たちが今の既成政党を見たらどう思うでしょう。
多くの既成政党では、定年を越えた人たちが権力を握っています。
40代が若者と言われる世界で、しかもその数が少ないです。
リベラルであるはずの立憲民主党もそれは同じで、むしろ酷い状態に見えます。
ここは、枝野さんたちの旧民主党が政権を取っていた時代の議員たちが長らく党を仕切っており、若者の顔が全然見えてきませんですからね。
ようやく比較的若い党首に変わりましたが、ときすでに遅しという感じです。

つまり、政策的にも見えてる党内の様子にしても、若者をときめかせるものが既成政党にはあまりなんですよね。
そうした彼らが、ネットで拡散しているものに、飛びつき、陰謀論に煽られたりして、何となく既成政党にモノを申してくれそうな人たちに勢いで投票してしまっても責められないですよね。

左派政党、まあ、特に立憲民主党なんですが、彼らが今の期待されていないという状況を打破するには、まず大胆に若者向けの政策を出していく必要があるのではないでしょうか。
少子化対策や、若者への支援策は与党である自民党も口にしていますが、もっと目立つ公約をする必要があります。

具体的には、まず大学の無償化です。
これは維新などがすでに言っていることですが、機会均等を目指すという意味で、口にしてみる価値は絶対にあると思います。
実際、若者の多くが奨学金を借りなければ大学に行けない時代ですからね。
大学を無償化にしてくれると、子育て世代もお金を使い始めますし、若者たちも奨学金で縛られる必要がなくなるわけですから、経済政策としても効果がある政策ではないでしょうか。

それと、とにもかくにも若者の賃金を上げる政策が必要です。
非正規雇用が多すぎるんですよ。
本当は、非正規雇用という制度そのものをどうにかしてほしいと思うんですけれど、とにかく人をちゃんと育て、人並みに結婚や子どもを考えられるくらいの賃金を与える企業に対して、もっと目立つ形で、もっと露骨な優遇政策を取った方がいいと思います。
一定の基準を満たしたら、税制優遇とか補助金とか言った具合に。
今でもやっているとは思いますが、企業が絶対にやった方が得だと思わせるくらいのものを与える必要がありますね。

そして、最後に、やはり党内の若手が活躍している顔が見えないのは問題があると思いますよ。
若ければいいというわけではありませんが、立憲民主党自身が、ちゃんと若手を育てている、彼らに活躍の場を与えているってところを見せないと。
誰がマウントをとる訳ではなく、また無様な権力争いに終始するわけでもなく、老若男女が力を合わせて活躍している姿を見せれば、若者だけでなく、国民全体の心に響くものがあるのではないでしょうか。

とにかく今までのしがらみややり方に囚われてはダメです。
今の状況を冷静に判断した上で、モデルチェンジをしてほしいですね。