「自由研究には向かない殺人」 著 ホリー・ジャクソン

「自由研究には向かない殺人」 

著 ホリー・ジャクソン

単純に読み物として面白かったです。

厚い文庫ですが、すらすらと一気に読むことが出来ました。

この作品において非常に特徴的であるのが、主人公が女子高校生であり、彼女が自由研究のために殺人事件を解き明かそうとしているところ。

犯人とされている人物と面識があり、彼が人殺しなどするわけないという直感から、主人公は捜査をを始めるのですが、この設定がほかのミステリーとの差別化を際立たせています。

田舎町で若い女性が失踪し、それを探すという展開はよくあるといえば、よくある設定なのですが、それを探すのもまた若い女性であり、しかも自由研究のためにそれをやるという枷を作ることで、ストーリーの面白みを上げているんですね。

実際、そのおかげで暗くなりがちな事件の話が、活発で生き生きとした話になっているし、若年女性であるがゆえに捜査に限界があり、それをどう知恵で乗り越えていくのかというところが話のミソになっています。

面白かったのは、知的であり、頭のいい主人公の捜査の進め方がITに頼っているところ。

これは今風ですね。

技術革新がすごい勢いで進んでいる現代において、IT技術を使った捜査手法は、それ自体がすぐに古いものとなってしまう可能性が高いにもかかわらず、女子高生を主人公にすることでそれを普遍的なやり方として当たり前に描いているところに、新しさを感じました。

またイギリスの現代文学だけであって、作品そのものが人種やジェンダーに非常に配慮されて書かれているのが感ぜられたのも面白かったです。

こういう設定の置き方が今やヨーロッパでは主流であるのだなと改めて思いました。

少しポリティカルコレクトが強すぎる感じがあり、主人公が絶対正義の立場に置かれてしまっている点が気にはなりましたが、たぶんこうした描き方が今後日本でも主流になっていくんでしょうね。

実際、こういう主人公の描き方は、感情移入するしかないわけですからね。

そういう意味でも、単純に万人が楽しめるミステリーたと思いました。