企業活動を行うためには様々な原材料が必要です。生産プロセスを社内で一貫して行っているところはまれで、ほとんどの場合は、最終加工に必要な原材料はサプライヤーから調達されます。そしてその原材料を作るための素材を別のサプライヤーから、その素材を作るための原料をまた別のサプライヤーから、とサプライヤーが何重にも連なって原材料は供給されているのです。
このような原材料を調達するためのサプライヤーの連なりをサプライチェーンと呼びますが、企業は、直接交渉するサプライズ―のことは把握していても、その先に連なる上位のサプライヤーについては名前すら知らないことがほとんどです。
これまでは、そういったサプライチェーンに環境問題や社会問題が発生したとしても、それはその問題を起こしたサプライヤーの責任だというのが当たり前となってきました。ただ今の消費者はそれでは納得してくれません。サプライチェーンの適切な管理も企業の責務だと言われるようになった結果、企業は自分たちが使用する原材料には問題がないことを示さなくてはいけなくなったのです。
ただ原材料一つ一つのサプライチェーンを遡り、膨大な数のサプライヤーを把握するには、非常に手間がかかり、企業の負担も大きすぎます。そこで近年では、そうした事情を解決するために、国際的な認証制度が利用されるようになってきました。
CSRに関する主な認証制度は以下の通りです。
電子機器 EICC(電子業界 CSR アライアンス)
JEITA(電子情報技術産業協会、日本)
自動車 AIAG(自動車業界標準化推進組織)
JAPIA(日本自動車部品工業会)
アパレル・小売 等 GSCP(小売業を中心とした CSR 調達の推進団体)
SAC(サステナブルなアパレル連合)
ILO Better Works Program(IFC との共同実施プログラム)
DISHA(インド政府が支援するアパレル業界の自主的取り組み)
食品・消費財 ICTI(国際玩具業界委員会)
RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)
MSC(海のエコラベルを推進する国際 NPO)
ASC(水産養殖管理協議会)
FSC(森林管理協議会)
RA(レインフォレスト・アライアンス)
SGEC(緑の循環認証会議)
PEFC(各国・地域で作成された森林認証基準を相互承認する団体)
Fruit South Africa(南アフリカ政府が支援する果物の認証)
素材 TfS(化学業界のサプライチェーンにおけるサステナビリティ 推進団体)
代表的なものだけでも多岐にわたって色々とありますね。こうした認証制度にとって重要なポイントとしては、①明確な基準があり、多くのステークホルダーが合意している、②基準が国際的に統一されている、③その基準の適合性を第三者が認証している、④適合状況が定期的に確認されている、の4点が挙げられます。
サプライチェーンにおける環境・労働問題などの透明化は今後もますます要求されていくことは間違いないでしょう。それぞれの企業はこうした認証制度を利用することで、消費者の期待に応えていくことが求められていきますね。