緊急事態宣言がまた発令されましたね。お年寄りを中心としたとにかく早く緊急事態宣言を出して感染拡大を抑えろという人たちと、若い人を中心とした経済を回さないと困るという人たちの間の社会分断がより一層と深まりそうです。
働き盛りの年齢であるわたしとしては、もちろん経済を動かさないことにはどうにもならないとは思いますが、病院で働く身としては、身近で医者や看護師を見ている分、まずは感染を抑えないことには、とも思っています。
つまり、ことコロナにおいては年齢や置かれている立ち位置によって主張する立場がどうしても変わってきてしまうのですが、わたしの場合それがとても複雑なんですよね。
そしてそうした複雑な感覚は経済と医療の両方を考えなければいけない政治家や官僚も同じだと思います。ただか彼らはわたしと違って、複雑のひと言では済まされず何らかの方策を考えなくてはいけません。そんな彼らから今回出てきたのが「限定的・集中的」な緊急事態宣言の再発令です。
ようするにほぼ飲食店に対象を絞られた宣言ですね。
様々な立場から色々と意見はあると思いますが、わたし個人としては今回の飲食店に絞った形での制限は正しいと思います。
わたしは仕事で病院の統計データのもとを調べてまとめているのですが、これまで数百人にも及ぶコロナに罹った患者の感染経路を丹念に調べていくと色んなことがわかってくるんですよね。
あまり詳しいことは書けないのですが、時期によって感染経路に多少の違いがあるんです。
当初武漢からウイルスが日本に入ってきたときは、ほぼクラスター対策で感染の拡大は抑えられてきました。
風向きが変わったのは、欧米に感染が広がり、そのときに欧米にいた人たちが日本に帰国してからです。武漢から帰国した人や中国人観光客と違って、その数があまりに多かったことでクラスター対策では追いつけなくなり、彼らを介して感染が一気に広がってしまいました。
特徴的だったのが、ウイルスを持ち込んだ人は当然海外渡航歴がある人ばかりであり、彼らの多くが会社経営などをしてる、富裕層であり活動的な人が多かったということです。当然彼らは積極的に社交をします。当初酒場でのクラスターが銀座や六本木に多く、感染者比率が港区が一番高かったのはこうした理由と見て間違いないでしょう。
その後4月に緊急事態宣言が出された後は、新宿の繁華街を中心に感染は完全には収まらずに燻り続けます。
そして宣言解除後は介護施設などで対策が取られるようになったことと、中高年が不必要に出歩かなくなったことで、感染者の中心は若者に移ります。
飲食店の従業員を中心に不特定多数の人と会わなければならない職業の人が多かったのもこの時期ですが、同時に感染経路不明の患者も増え始めます。
ただ身に覚えがなく感染経路不明という人は少なく、会食や飲み会などで感染したと思われる人が大半でした。
秋から冬になるころには、ウイルスの感染力が強くなったことと、国民に緩みが出てきてしまったことでまた感染が拡大するようになってきました。
現状は家族感染が一番多く、年齢の幅はかなりありますが、元々は家族の誰かが仕事なり飲み会なりで感染し、家庭内に持ち込まれたが故です。
つまり接客のある仕事か飲み会や会食が感染拡大のエンジンとなっており、そしてそれは最初から一貫して変わらない構図だったんですよね。
おそらく医師会や政府はこの事実をとっくにわかっているでしょう。だからこそ、エンジンとなっている飲食店を狙い撃ちにしたわけですね。
なので、緊急事態宣言が飲食店の利用を制限したものだということは合点がいきます。
またそれ以上の制限を課してしまうことは、経済をよりガタガタにしてしまいますからね。
保育園や小中学学校に休園休校を求めないことも、これ以上子どもたちに影響をかけられないからこそですし、また親が休まなければいけない事態に追い込まれ、親自身が雇い止めをされてしまうことや、親から子による虐待の増加を防ぐという意味もあるでしょう。
もはや経済や学業に多大な負担はかけられない。
かといって感染の拡大を防がなきゃいけない。
そうした事情を鑑みて出た答えが、明らかに感染拡大のエンジンとなっている飲食店を狙い撃ちにした制限なのだと思います。
個人的には、自分が知っているデータから見てもこの方策自体は間違いではないと思います。ただこうするならこうするで発令するのが遅すぎます。
出来れば十二月の頭、遅くともクリスマス前にはキチンと説明してやるべきでした。
また結果的に飲食店が悪者のように扱われていますが、これもそうじゃないんだということを政府も自治体も公式見解として口にするべきです。
わたしがみる限り飲食店のほとんどは必死に感染症対策をしていました。
問題なのはその努力を反故にしている客の常識やデリカシーのなさです。
経済を動かすことは許容したとしても、それならそれで国民に対して緩まないように訴え続けるべきだったんじゃないでしょうか?
国のリーダーがそれをやらずに一体誰がやるのでしょうか?
国のリーダーがそれをやらないから自粛警察をはじめとした同調圧力が自然発生し、社会分断が起き始めているのではないでしょうか?
名誉欲や自己実現のために議員になっている人たちはリーダーには相応しくありません。
自分が影になってもみんなが手を取り合って上手くやれるように鼓舞をし続けて多様な考えを認め合いつつもまとめていくのがリーダーの本当の役割であるはずなのです。
それをせずに、自分たちは好き勝手にやる。それじゃ若者たちは、勝手にやり出しますよ。結果的に飲食店が貧乏くじを引かされることになっています。このままでは、コロナが終わっても、ほとんどの飲食店が姿を消してしまいかねません。
協力金が規模にかかわらず1日5万円はいくらなんでも安すぎます。個人経営の小さな店ならまだしも、少し大きな規模の店では1日6万円では焼け石に水です。
少なくとも従業員の雇用と給与保全を前提に従業員一人当たり1日6万円くらいは出さないと。
医師会も医師会で、今になってテレビで大騒ぎをしていますが、冬になれば感染が増えるのはわかっていたはずです。
国公立病院や大学病院だけでなく、市井の診療所の病床や人材をもっと活用出来るような仕組みをこの何か月間してこなかったのは正直罪深いです。
160万あるうちの病床のうち、コロナ用の病床としてはまだ2%しか使っていないのですから。
それで、飲食店だけにその責任を負わせるのはさすがにちょっとあんまりです。
国の資産を多少売ってもいいですから、もう少し飲食店に何とかしてあげてほしいです。