自民党の総裁選は、岸田、高市、河野の三氏が立候補しましたね。
個人的に注目しているのは、岸田さんがこれまでの新自由主義の転換をハッキリ口にしている点です。
安倍第二次政権の発足以来、アベノミクスといわれた経済政策は確かに株価を押し上げ、コロナ以前まえは表面上の経済が良くなったような気がしました。
ただアベノミクスが何年にも渡って継続された結果、明らかになったのは結局経済的に潤ったのは、大企業と投資家だけで、多くの国民にはその恩恵はありませんでした。
格差は拡大し、社会分断も進んでしまったのです。
短期的にアベノミクスが効果があったことが確かですが、このまま果たしてその路線を続けていいのかという点が今後の日本をカタチ作る上での焦点であることは間違いないと思います。
総裁選の候補者のうちで高市さんは、ハッキリとアベノミクスを継承することを宣言しています。
少なくとも2%の物価上昇率目標を実現してデフレを脱却するまでは、プライマリーバランスを黒字化する政府目標を凍結して「戦略的な財政出動」を拡大していくそうです。
方法はさておき、確かにまずはデフレを脱却することが喫緊の問題であるということは間違いないでしょう。
この点については、どの候補の認識も同じだと思います。
問題は、そのやり方ですね。
アベノミクスを継承する高市さんと対照的なことを言っているのは、岸田さんです。
富裕層に有利な金融緩和による株高や、低所得層を支える最低賃金引き上げといった労働政策の恩恵を受けられない中間層に対し、所得再分配の強化が必要と主張しています。
子育て世帯の教育費や住居費を支援することで、中間層の拡大と少子化解決を目指したいそうです。
財政健全化の旗を堅持するという点でも、高市さんのアプローチと大きく異なっています。
個人的には、経済面において岸田さんの言っている方向性には賛成です。
これまでのアベノミクス的なやり方で何年もかけても2%の物価上昇率の目標が達成できなかったことはもはや結果として出てしまっている事実ですからね。
結局、大企業や投資家が潤ったところで、企業は内部留保してしまいますし、投資家はさらにそのお金で投資をするだけなので、いわゆる一般庶民にはお金が降りてこないのです。
アベノミクスが始まったとき、いわゆるトリクルダウン理論と呼ばれるものが言われました。
「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」というものですね。
アベノミクスは基本的にこの考え方をもとに行われてきましたし、高市さんが継承するのもこの路線です。
でもOECDもすでに結論を出していますが、そもそもトリクルダウンが起こらないことが証明されてしまっています。
つまりいくらアベノミクス的なことを続けたところで、どこまで行っても潤うのは富裕層だけで、格差はどんどんと広がっていきます。
そして、格差が広がるということは、一部の富裕層の既得権だけが守られる一方で、国そのものの経済が先細っていくことを意味しています。
アベノミクスを継続すれば、かつて一億総中流と呼ばれていた日本社会の在り方を徐々に変えていくことは間違いないでしょう。
そういう意味で、岸田さんがすでに行き詰ったアベノミクスを転換すると言っていることは理にかなっていると思います。
格差を縮めることが国の経済を活性化させるというのは、もはや世界の常識となっていますし、欧米諸国の多くもとにかく一般庶民の所得を上げることに注力していますしね。
少子高齢化対策を進めるという観点から行っても、岸田さんのいう子育て世代の支援はもはや必須です。
個人的には、もっとも効果がある政策として大学や専門学校などの高等教育の無償化を岸田さんには考えてほしいと思っています。
単純に考えても、それがもっとも子育て世代にとっての支援になりますし、そこが無償化されれば、子育て世代がお金を使えるようになるので経済も活性化します。
つまり、この高等教育の無償化に関しては、いいことしかなく、むしろなぜこれをやらないのか疑問しかありません。
富裕層への教育の偏りが解消されるので、それだけ競争力が高まりますし、教育費の問題さえある程度解消されれば、2人目3人目を考える子育て世代も多く出てくることは間違いありませんからね。
そしてもう一つ岸田さんに是非やってもらいたい政策は、最低賃金の引き上げです。最低でも欧米レベルと同程度の時給1500円は必要だと思います。
デフレを解消するには、一番効果的な方法だと思うし、欧米との賃金格差が一気に縮まるやり方です。これまで最低賃金の引き上げといえば、社会保障政策の一環として申し訳程度やっていた感じですが、それを経済政策として、明確に個人の所得を上げるんだという強いメッセージと決意を込めてやってほしいです。
確かにこのやり方は相当な痛みを伴います。数年前に段階的に最低賃金を引き上げていった韓国の例を見ても分かるように、賃金を払えないことで倒産する企業は増えるでしょうし、当然失業者も増えるでしょう。
でも逆にいえば、労働者に十分な賃金を払うことが出来ない企業をゾンビのように生きながらえさせていることが日本社会の問題点であり、いかに非生産的な会社を減らし、生産的な会社を増やしていけるかというところに今後の日本の再浮上の鍵があるのだと思います。
実際、最低賃金1,500以上が義務となれば、企業はその他の部分を削らざるを得なくなり、非生産的な高給取りに対してメスを入れなければならなくなります。
とにかく人件費を削ることで生産性を保ってきた企業が、必然的に生産的な動きをしなければいけなくなっていきますからね。
もちろん、淘汰される会社も多いと思いますが、そこについては、ちゃんと無理なく統廃合が出来るような助成金などの仕組みを作って行ってほしいです。
失業対策も同時にね。
最低賃金1500円はまず経団連をはじめとする各企業から猛反発を食らうでしょう。
倒産数や失業数が増えれば、一部のマスコミや国民からの反発も必至です。
でも、格差を解消せるにはそれぐらいの強い政策が必要です。
果たして岸田さんがそこまでやり切る覚悟と気概があるか…格差解消を口にするなら、それぐらいなことは思い切ってやってほしいですね。
現状、河野さんは経済政策については、具体的なことを言っていないので、格差を争点にしている分、岸田さんを応援したいですね。
ただ岸田さんは保守層に対して擦り寄りも見せており、総理大臣になったところで本当に自分のやりたいことが出来るのか疑問点もあります。
岸田さん本人はそんな気持ちが大してなくても、憲法改正に踏み切っていくことも考えれますからね。
本当に必要なモノが議論の末に決められるならまだしも、一部の人の主義主張に沿った考え方によって変えられていくのは、明らかに間違っていますからね。
そこの点は岸田さんになった場合の不安点であり、そうした観点からすれば、河野さんの方が安心出来るかもしれませんし、自民党を変えるという意味でも河野さんの方がいいのかもしれません。
まあ、自民党員でもないので、わたしが騒いだところで何の投票権もなく、どうにもならない話なのですが、とにかく国民の一人として今回の総裁選は注視していきたいですね。