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厳選映画批評

「今度は愛妻家」

「今度は愛妻家」 2010年公開/日本 好きな人と一緒に観てください。ケビン・コスナー主演の「ボディーガード」のキャッチコピーなんですけれど、この「今度は愛妻家」という映画こそ、この言葉がぴったり合う作品だと思いました。 売れっ子の写真家だったものの、写真が撮れなくなった俊介を明るく世話してきた妻のさくらであったが、俊介の心無い言葉に次第に愛想を尽かしていく……。まず最初の三十分では、いつも言い合 […]

「ルパン三世 カリオストロの城」

ルパン三世 カリオストロの城 1979年公開/日本 宮﨑駿作品における、得体の知れない、“優しさ”の正体。それが一体、何であるのか、わたしはずっと悩んでいました。みなさん、ご存知の通り、この映画は、元々はモンキー・パンチ原作のマンガで、国民的人気のアニメでもあるのですが、わたしたちが知っている、TVアニメやほかの映画作品におけるルパン三世のイメージと、のちに巨匠となる若き日の宮崎駿が描き出した、こ […]

「スカイ・クロラ」

スカイ・クロラ 2008年公開/日本 森博嗣の原作シリーズを読まなければ、判りにくいという評判でありましたが、個人的にはそんなことはないと思いました。むしろゴチャゴチャした説明がなく、特別な設定ながらも、淡々とそこだけを切り取って、それが当たり前のように進んでいく感じに、引き込まれましたね。押井守監督の映画は、「アヴァロン」や「イノセンス」に代表されるように、どんどんと抽象的な方向に向かっていくこ […]

「明日の記憶」

明日の記憶 2006年公開/日本 若年性アルツハイマーの話ですが、もし自分もこうなったらと思うと、非常に恐ろしい話ですね。もはや認知症の原因の大半といわれるアルツハイマー病ですけれど、老人になれば、意外とポピュラーな病名でです。でも身近にそういう人がいなければやはり他人事に終わってしまう話で、現実感はありません。そんな中で、リアルに、しかも老人でなく、若年性の病気を患ってしまった描写をまざまざと見 […]

「恋に落ちたシェイクスピア」

恋に落ちたシェイクスピア 1998年公開/アメリカ 「ロミオとジュリエット」が出来上がるまでのシェイクスピアの恋模様を描いた作品です。まず題材の扱い方がとても面白い。これまで幾度となく、映画化されてきた「ロミオとジュリエット」をまさにこう扱ったか!とのっけから驚かされました。当時の風紀を乱す理由で、女性が舞台に上がれないという風習をうまく使って、見事なまでの展開を見せています。 それで、その「ロミ […]

「永遠のこどもたち」

永遠のこどもたち 2007年公開/スペイン、メキシコ (ネタバレ注意) ホラーとか、オカルトとか、サスペンスだとかいう括りで語ってしまってはもったいない映画ですね。正直結構怖い話で、怖がらせることにものすごい工夫を重ねながらも、それでいてテーマもキッチリと語っている傑作であると思います。やや細部で都合がよすぎる点もあるけれど、そんなものは吹っ飛んでしまうぐらいに映画に引き込まれました。 映画は孤児 […]

「暗くなるまで待って」

暗くなるまで待って 1967年公開/アメリカ 元々が舞台の作品だけあって、いわゆる優れた密室劇の要素をふんだんに含んでいる作品です。しかもただの密室劇というだけじゃなく、これに主人公が盲目という条件が加わるので、観ている人間からしてみれば、二重の恐怖が伝わってきます。 普通密室劇の場合、襲ってくる敵は、物語の中盤や最後までわからないものです。密室という限られた空間の中で、何だかわからないものが襲っ […]

「イン・ハー・シューズ」

イン・ハー・シューズ 2005年公開/アメリカ/ ベストセラーになった原作を読んでいないのでわかりませんが、そもそも原作が良いのか、映画化の際に脚色がいいのか、とにかく内容がすこぶる好みの映画でした。 人が羨む容姿を持っているのにもかかわらず、難読症というハンデキャップがコンプレックスとなって、人生を踏み外している妹のマギーと、弁護士としてキャリアを持ちながら、その容姿をコンプレックスに思い、履き […]

「エリザベス」

エリザベス 1998年公開/イギリス エリザベス一世のイメージはといえば、まず頭に浮かぶのは、世界史の教科書に載っていた肖像画の写真です。その中での彼女は、豪華な装飾品やドレスを身にまとい、これでもかというほどの威厳をかもし出していますが、一方でその表情は、おそろしいほど精気がなく、まるで精巧にできたロボットのような顔をしています。 学生時代のわたしは、世界を制した大英帝国を築き上げた女王が、なぜ […]

「イカとクジラ」

イカとクジラ 2005年公開/アメリカ (ネタバレ注意!) 『家族』というものを考えさせられる作品でですね。普通、この手のテーマの場合、感動的なもの雰囲気を持ったものが多いのですが、この作品は、どこか皮肉っぽくて、違う見方をしていて、それ故に普段感じない変遷を経て、心に響いてくる感じがします。 この作品、両親がともに作家であり、16歳と12歳の二人の男の子がいる四人家族であるのですが、のっけからう […]