草津町、性被害を訴えた町議がリコールに……モーレツに民主主義の私物化を感じる。

失職町議「告白は真実。裁判で明らかに」政治活動は継続

何かこのニュースしばらく追っていましたけれど、酷いですね。
事の発端は、12人の町議会で、唯一の女性議員であった新井祥子町議が町長からの性被害を受けたと告白したことです。
これを事実無根とした町長が新井町議を名誉棄損で告訴し、さらに除名処分にした上で、リコールを請求しました。
そして住民投票によって圧倒的多数で失職が決定。

町議が性被害に遭ったかどうかを論じるつもりはありません。
伊藤詩織さんのときのように、泥酔して身動きがとれない伊藤さんをホテルに引っ張っていたというわかりやすい映像等の証拠が出ていない限り、報道による情報だけで判断がつかないからです。
それぞれが証言をしていますが、それぞれについて嘘かどうかなんてわからないでしょう。
そして、それは町議のリコールに対して判断を下して投票をした草津町の住人も同じはずのです。
つまり、性被害以前に、まだ警察の捜査も裁判の判決も何もないものに対して、町議が嘘をついていることを前提にした住民投票を住民に迫っていることに大きな問題があるのです。性被害のことだけじゃなく、町議が虚言ばかりを言っていることに対するリコールだというのが町長側の説明ですが、そんなことを言うなら、理屈的にはそもそも町長の話だって、どこまでが本当でどこまでが嘘かなんてわからないじゃないですか。4年前の性被害についても副町長が同席していたとか言っているけれど、そんなのだっていくらでもグルになって口裏合わせが出来ますよね。
つまり、どっちが嘘かなんて第三者には本当に分からないんです。それなのに住民投票でどちらかが嘘をついているのかを決めるって。子どもの喧嘩かよ、と思います。
しかも町長は町ぐるみで町議のリコールを喧伝し、町中にポスターを張り巡らし、町議会議員のほとんどもまるで虐めのごとく議会の最中に罵声を浴びせていたそうです。

そのときの様子は、作家の北原みのりさんのAERAの連載にも載っていますね。
殺気だつ草津町傍聴席「犬だってしねぇよ」 セクハラを背中で浴び続けた気分になった

これ、ハッキリって議会や住民投票の私物化もはなはだしいですよ。民主主義を冒とくしているといっても過言じゃないです。
おそらく町長としては住民投票で町議をリコールしたことで、自分が正しいのだと外堀を埋めたつもりなんでしょうけれど、こんな力づくなやり方をすれば、むしろ逆に疑いたくもなります。少なくとも、この町長が凄まじく独裁的なことと、町議会がものすごく古く、多様性がないことだけはハッキリとわかりました。
多分、この問題、大きくなりますよ。日本のメディアはそれほど報じないかもしれませんが、欧米メディアからしてみれば、フェミニストかどうか以前にこんなのありえない話ですからね。
正直、こんなミソジニー丸出しのやり方は幼稚だと思うし、恥ずかしいです。
本当に自分が潔白なのだと思えば、正々堂々と裁判なりなんなりで主張すればいいだけの話なのに、自分の権力をこういう形で行使するなんて。

転覆不可能な支配の中で、住民投票なんてしても、そんなのは民主主義とは言えないんですよ。

そして、町長だけでなく、それに乗っかっている草津町にもガッカリです。
まあ、住民からしてみれば、温泉と観光で成り立っているところですから、町長に逆らえない空気があるのかもしれないんでしょうけれども。
でも、こういう声の大きい人に支配されているって、本当に前時代的です。
たぶん「何かおかしい」という声すらあげづらいんでしょうね。
何にせよ、こういう形でみれば、ジェンダー対立の話も支配の話の一つだということが分かるし、力がある側が常に力で押し切ろうとするというのもみてとれます。

杉田水脈議員が言うように、本当にいつも女性だけが嘘をつくんですかね?
力づくで押し切ろうとする男性は問題じゃないんですかね?

「草津温泉には行きたくない」というハッシュダクがすでに出回っているそうです。
草津でコロナ禍でも頑張っている人には申し訳ないんですけれども、こんな感じな場所に、正直妻や娘を連れて行きたくないし、わたし自身も行きたくないですね……

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